リニアの着工にGOサインが出ましたが、トンネル工事で出た土砂に埋もれてもうすぐ消えてしまう森があります。静岡県静岡市が市民とともに、その森の姿を記録しています。
静岡大学・増澤武弘 客員教授:
来年 今年の夏でもいいですけど、来たときにはなくなっています。全く森林がゼロになっている
もうすぐ消えてしまう森。
河村悦代 記者:
この一帯とても美しい森が広がっているんですが、高さ最大65mまで土砂に埋もれる予定です。ビル21階建てに相当し、東京ドーム3杯分の土砂が運び込まれます
先人が守ってきた“森の姿”を残す取り組みに同行しました。
川勝平太 前知事(7月11日・「南アルプスの保全は地球倫理」より):
トンネル工事は、南アルプスには、「百害あって一利なし」です。
着工容認後も、川勝平太 前知事が激しく批判する静岡工区のトンネル工事。
反対する理由は水の問題だけではありません。
トンネルを掘って出た土砂を永久的に置いておく「発生土置き場」が、大井川上流に6カ所できます。
静岡市内から北へ約100km。
現れたのは、美しい「燕沢(つばくろざわ)の森」です。
7月19日、市民や企業などからの参加者が植生調査に訪れました。
静岡大学・増澤武弘 客員教授:
燕沢の森は平地で巨木がたくさん。 “巨木の森”に近い
南アルプスの植物を研究する静岡大学の増澤武弘 客員教授は、リニアの専門家による会議の委員も務めました。
燕沢の森には、静岡工区の発生土の97%にあたる360万立方メートルの土砂が置かれます。
静岡大学・増澤武弘 客員教授:
近い将来、本当に近い将来ですよ。今年か来年にはすべて切る
巨木の森は間もなく皆、伐採されることになっています。
木の種類を調べ、大きさを測り、記録。
静岡市は増澤教授とともに、市民を募ってこの取り組みを3年前から毎年続けています。
静岡市環境共生課・増田早紀さん:
そのデータを蓄積して、いつか工事が終わって山を復元するときに基礎データになればいい
JRは、盛り土に災害対策を施し、表面を通常の土で覆ったあと、緑化することにしています。
発生土置き場周辺で採取された種子を育て、元の森に近い環境に戻そうとしています。
参加者の中には高校生もいました。
聖光学院高等学校の3年生、阪脇鉄平さんです。
阪脇さんは学校でリニアについて調べています。
着工までの合意形成に、住民参加のプロセスが足りていなかったと感じました。
聖光学院高校 3年生・阪脇鉄平さん:
実際にこれからリニア工事によって、どういった自然環境が失われるのか見て、自分が発信することによって、危機感を少しでも持ってもらえれば
住民がもっと議論に関わるべき。
そう考え、今回の植生調査にも手を上げました。
調査が終わり、結果を集計してみると、見えてきたことがあります。
静岡大学・増澤武弘 客員教授:
明らかに2つの山になっている
木の高さと直径ごとの本数に、それぞれ2つのピークが現れます。
通常の自然林は小さい木が多く、大きい木は少ないためL字型のグラフになります。
不自然な2つのピークからわかるのは“人の関与”です。
静岡大学・増澤武弘 客員教授:
大木の森にするため、少しだけ手を入れている。ですから大きな森が育ってきた。本来だったら切って材木に使いたいところですが、東海パルプ(当時の土地所有者)は切らずに残したんです
ただの自然林ではなく、昔、人が手をかけて大切に守っていた森だということが、データから見えてきました。
さらに北に進むと、既に伐採が始まっています。
燕沢の森の近い将来です。
聖光学院高校 3年生・阪脇鉄平さん:
多種多様な木や植物があり、大切しなければならない環境だと感じました。今回のデータを生かしながら、自分たちの世代で(新しい森を)作り上げたい
工事が終わったとき、以前よりさらに素晴らしい森にすることが、自然に手を入れる私たちに課せられた責任です。
