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リニア沿線自治体のトップは落胆隠せず…静岡に恨み節? 当の川勝知事はどこ吹く風 今後も部分開業主張へ

JR東海・丹羽俊介 社長(3月29日)

それは突然の出来事だった。JR東海の丹羽俊介 社長は3月29日、リニア中央新幹線について「2027年の開業は実現できる状況にはない」と表明。これまで2027年の開業が絶望視されながらも断定的な発言を避けていただけに驚きが広がった。

各地で進む工事 着工に至らぬ静岡工区

リニア中央新幹線の実験線

“夢の超高速鉄道”とも称されるリニア中央新幹線。

その歴史は古く東海道新幹線の開業を2年後に控えた1962年、東京・大阪間を1時間で結ぶことを目指し “次世代”の超高速鉄道としてリニアモーター推進浮上式鉄道の研究が始まった。今から60年以上前の話だ。10年後の1972年には初めて浮上走行に成功している。

現在は開業の第一段階となる東京・名古屋間の各地で建設工事が進められているが、静岡工区だけが着工に至っていない。

このため、JR東海は当初目標としていた2027年の開業は「極めて困難な状況」との認識を示し、2023年12月には開業時期を2027年から“2027年以降”へと変更したが、断定的なことはこれまで明言を避け続けてきた。

JRの発表に沿線自治体の首長は落胆

取材に応じる愛知・大村知事(3月29日)

ところが2024年3月29日。国の有識者会議でJR東海が示した環境や生物への対策の実施状況を監視・指導するモニタリング会議の冒頭、丹羽俊介 社長が「静岡工区が名古屋までの開業の遅れに直結している」と切り出した。

その上で「残念ながら2027年の名古屋までの開業は実現出来る状況にはなく、新たな開業時期も静岡工区のトンネル掘削工事にいまだ着手の見込みが立たないことから見通すことが出来ない」と、初めて公の場で正式に2027年の開業断念を発表。

静岡市の難波喬司 市長が「駅が出来るところの沿線自治体には衝撃的な発表」と評した通り、今回の表明には沿線の首長も落胆している。

リニア中央新幹線の建設促進期成同盟会の会長を務める愛知県の大村秀章 知事は「2027年開業を目指して沿線都府県は地域開発なり、様々なプロジェクトに取り組んできた。それが1~2年ではなく、さらにずれ込んでいくことは断腸の思いと言わざるを得ない。極めて残念」と肩を落とした。

一方、長野県駅が設置される飯田市の佐藤健 市長は「飯田に投資をするという動きを作っていくのがずっと先の話になるので影響は避けられない。JR東海と静岡県には協議のスピードを上げてほしい」と発言。

取材に応じる神奈川・黒岩知事(3月29日)

かつて車両基地の用地取得の状況をめぐり静岡県の川勝平太 知事から「現状は危機的。全体のスケジュールに大きな影響を及ぼしている」とやり玉にあげられた神奈川県の黒岩祐治 知事も「2027年(の開業)は難しいかなと思っていたが、断念ということで非常にショック。しかも、まだ静岡工区が着手出来ておらず(開業が)相当先になるということで本当にがっかりしている」と口にし、「神奈川県としてはやるべきことはやってきた。国家プロジェクトなので、それぞれのところで、それぞれの責任を果たすのは当然のこと」と暗に川勝知事を皮肉った。

苦言を意に介さず“己貫く”川勝知事

インタビューに応じなかった静岡・川勝知事(3月29日)

しかし、当の川勝知事はどこ吹く風だ。

インタビューの要請には応じなかったがコメント文を発出し、そこにはこんな一文が記されている。

「静岡工区以外の工区は2027年までに完了できるということなので、その状況をしっかり確認した上で、どのような活用をしていくべきかをリニア中央新幹線建設促進期成同盟会において考えていきたい」

これは川勝知事の持論である“部分開業”を示唆したということに他ならないが、事業主体であるJR東海は部分開業を一貫して否定している。

さらに言えば、2023年1月に開かれた定例会見で丹羽社長は静岡工区における着工の見通しが立たないことを理由に「静岡工区の状況を踏まえて品川・名古屋間の各工区の進捗を確認しつつ、工事全体の進め方について検討を始めた」と述べていて、静岡工区以外の工区について2027年までに工事が完了するとの認識を示したことはない。

加えて、コメント文には「リニア中央新幹線の整備推進と大井川の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立に向けて、JR東海との対話を出来る限り速やかに進めていく」との文言もあるが、静岡県が設置している地質構造・水資源部会専門部会は2023年8月を最後に、生物多様性部会専門部会は2023年10月を最後に開かれていないだけでなく、次回の開催の見通しも立っておらず、“速やかに”とは程遠い状況だ。

また、4月1日に発令された人事異動で、リニア中央新幹線をめぐる問題に対応する南アルプス環境保全担当の県理事には秘書課長や知事戦略局長を歴任した川勝知事の側近中の側近で、腹心ともいえる人物が起用された。

だが、過去にリニア問題を担当していたことはなく、土木工学や環境問題の専門家でもないため実力は未知数で、川勝知事にはどのような狙いがあったのだろうか。

半世紀以上にも及ぶ“夢の超高速鉄道”プロジェクトは今、大きな岐路に立たされている。

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