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「事務方はちょっと困っているのでは…」混迷極めるリニア問題 県OBの大学教授が川勝知事に喝 静岡

進むようで進まないリニア問題

リニア中央新幹線の実験線

蓮見直樹アナウンサー:
ここからはリニア問題についてお伝えします。前進しているようで、なかなか進んでいないようにも感じるわけなんですが、2024年に入っても様々な動きが見られますよね。

松下翔太郎アナウンサー:
県内区間の着工は見通しがいまだ立っていないリニア問題の出口は一体どこにあるんでしょうかということで、入口デスクの解説も交えてお伝えします。

先週(2月5日)県がJR東海に対して示している47の課題、いわゆる“47項目”について会見を開き、さらに国交省の鉄道局長が川勝知事と面会(2月7日)と2つの大きな動きがありました。

まずはこちらをご覧ください。

鉄道局長の提案も”自己解釈”

独自の解釈を披露する川勝知事(2月7日)

国交省・村田茂樹 鉄道局長:
水資源の問題、それから環境保全の両分野について、総合的な視点で継続的に確認する新たな体制を準備して…

川勝平太 知事:
お~

2月7日、国土交通省の村田茂樹鉄道局長が県庁を訪れ川勝知事と面会。

南アルプスの環境保全に向け、JR東海の対策の実施状況を継続的に確認する第三者委員会を設置する方針を示しました。

国交省・村田茂樹 鉄道局長:
知事には要するに、この環境問題は報告書を出して終わりではなくて、まさに実行していくことが大事であるということと、絶えず見直しをして必要な対策を講じていくことが大事だと伝えたかった

しかし、川勝知事は…。

川勝平太 知事:
工事の進捗について第三者的な委員会がモニターするということは大変重要。工事の実施計画の進捗をモニターする委員会という風に私は受け取っている

JR東海の監視や指導を行う第三者委員会を「工事計画の進捗を監視する」と独自の解釈をした川勝知事。

「リニアは賛成」とかねてから主張する知事ですが、事業を推進するために動く国やJRとの議論は平行線をたどったまま。静岡県内での着工の見通しは立っていません。

川勝知事は事実誤認でないと言うが…

JR東海による異例の反論会見(1月24日)

品川-名古屋間を40分で結ぶとされるリニア中央新幹線。県が懸念している≪大井川の水問題≫、そして≪南アルプスの生態系≫については2023年、水問題に関してはいわゆる“田代ダム案”が、生態系に関しては国の有識者会議の報告書がまとまりました。

島田市・染谷絹代 市長:(2023年11月)
私ども協議会としては(田代ダム案の)実施案については「了承する」ということで考えている

静岡市・難波喬司 市長:(2023年12月)
非常にレベルの高い検討がされているので、自然環境の問題についてかなりのことが分かったと思っている

リニア問題は一歩前進したとの認識が多かった一方、川勝知事は…。

川勝平太 知事:(2023年11月)
有識者会議の議論は尊重しますが「それに従う」と一度も言ったことはありません。

不快感を示し、生態系に関して引き続き議論すると考えを示します。さらに…。

川勝平太 知事:(1月15日)
私としては出来るところからやっていくということ以外に、(リニア中央新幹線を)促進する方法はないと思っております

品川-甲府間などの「部分開業」を提案。生態系の問題は「大阪までの全線が開通する予定の2037年までに解決すればいいのでは」などと持論を展開しました。

こうした発言に対してJR東海は…。

JR東海・木村中 専務執行役員:(1月24日)
計画の内容ですとか事実関係について、ちょっと異なるのではと思う点が多くありまして。誤解を与えるような状況になっているのではということで大変困惑している状況です

川勝知事の発言は「事実と異なっている」と指摘。その上で「県の事務方には伝え理解を得られている」と説明しましたが…。

川勝平太 知事:(1月29日)
事実誤認という言葉が独り歩きしないようにしてください。何の事実を誤認しているんですか?自分が好き嫌いで言っているものではなくて、事業主体であるJR東海が公の場所に出したデータに基づいて発言をしている

知事は事実誤認などしておらず、JR東海の考えに沿った発言をしているとして従来の主張を繰り返しています。

静岡県と関係市町で認識にズレ

静岡県の懸念

松下翔太郎アナウンサー:
続けてこちらをご覧ください。

リニア工事に関する静岡県の懸念についてなんですが、まずリニア工事は南アルプスに巨大トンネルを掘るという内容の中で、静岡工区は8.9キロあるんですね。

その中で大きく2つの問題があるわけなんですが、まずは大井川の水問題、それから南アルプスの生態系に影響が出るのではないかという問題。どちらも2023年に大きく進展したかと思われたのですが…。

まず、水問題からいきます。水問題は2023年11月、田代ダム案、ダムで取る水を抑えて水の量を確保するという案を県が了承し、大井川流域市町の1つである島田市の染谷市長は「リニア問題の進展に大きな期待」という発言がありました。

そして生態系の問題については12月、国の有識者会議が生態系に与える影響を議論した中で、報告書を提出しました。南アルプスがある静岡市の難波市長は「8合目まで行っている」という見方でした

岩田明子さん「平行線がずっと続くのではと心配」

ジャーナリスト・岩田明子さん(元NHK政治部記者)

蓮見直樹アナウンサー:
この大井川の水問題と南アルプスの生態系の問題、大きな課題・問題としてはこの2つがずっと言われているわけなんですが、2023年に少し前進したかと思えば、そうではないという空気感もあったりして、岩田さんはどう見ていますか?

ジャーナリスト・岩田明子さん(元NHK政治部記者):
私がこのニュースに接した時には、やっぱりいろいろな課題を指摘された中で、ある程度前進したという印象を得たんですね。そもそも、いろいろ課題や条件を突きつけるのであれば、後からではなくて、最初に全部まとめて包括的に議論すればよかったのにという気もしたんですよね。

そもそも国家プロジェクトにして、(全線)開通を8年前倒しにして、財政投融資のお金も入っているプロジェクトですから、ここまで来たらもう少し国も前面に出てきて背中を押すなりしないと、こう着状態、平行線がずっと続いてしまうのではという心配をしましたね

小泉祐一郎 教授「事前の検討としては相当進んだ」

静岡産業大・小泉祐一郎 教授(県職員OB)

蓮見直樹アナウンサー:
国の有識者会議も報告書をまとめて提出し、静岡市の難波市長も「8合目まで行っている」と。ただ、川勝知事の認識は違っていたり、温度差がかなりありますよね。

ジャーナリスト・岩田明子さん(元NHK政治部記者):
しかも、その温度差というのがいつも後から後から、しかも争点がちょっとずつ、ちょっとズレていたり、土俵が小さくなっている印象があるんですよね。ですので、もう少し大きい視点で議論をするとか、それから一歩前進した部分については一回ここでピリオドを打つとか、ピン留めをするとか、そういった作業は必要だと思いますね。

蓮見直樹アナウンサー:
小泉さんは、このリニア問題についてずっと注目していると思うんですけれど、前進なのか、やっぱりまだ平行線なのか、どんな印象ですか?

静岡産業大・小泉祐一郎 教授(県職員OB):
平成24年(2012年)に環境影響評価のいろいろな手続きが始まったりしている中で、事前の検討としては相当進んだんですね。ハッキリ言って最初はJRの準備したもの(資料)が非常に不足点が多かったので難波副知事(現静岡市長)が指導し、そこで国の有識者会議に出たものというのは実は相当県からのアドバイスや指摘を受けて修正したものがいっているので、そういう意味では相当事前の段階としては…

本当は環境影響評価の段階でもっとしっかりやればいいのですが、日本の場合、環境影響評価というのは手続きだけなので、意見を言って終わりという手続きになってしまっていて、それが結局ここに至っているわけですが、そういう意味では事前の段階としては進んでいます。

川勝知事の発言アレコレ

川勝知事の発言アレコレ

蓮見直樹アナウンサー:
けれども、川勝知事とJR側の認識の違いがよく指摘されますが、なかなか時間がかかっているということですよね?

松下翔太郎アナウンサー:
リニア問題をめぐる知事の発言などについて見ていきます。

まずは2022年7月、リニアの建設を促進する立場の期成同盟会に静岡県も加盟し、もちろんリニアを推進する立場での加盟となりました。

そして2023年10月、川勝知事は「1合目より少し進む」という見方を示し、11月と12月には先ほどもお伝えしましたけれど、水問題に関しては田代ダム案を県が了承し、一気に進むかなという風に見られ、生態系については国の有識者会議が報告書を提出しています。

その同じ12月ですけれど、川勝知事は「部分開業こそ解決策」ということで部分開業という考え方が再び出てきたという形になりました。

そして2024年に入ります。1月、このリニア問題について「一度下山した」「生態系は2037年までに解決すればよいのでは」という考え方、先ほど独自の考え方とお伝えしましたが、このような表現がありました。

これに対してJR東海から「知事は事実を誤認している」と会見で指摘があったんですね。

そして2月に入っての大きな動きです。県がJR東海に対して示している47個の課題について県が会見し、県としては47あるうちの30項目がまだ解決していないという見方を示したんですね。7日には川勝知事が国交省の鉄道局長と面会と言う大きな2つの動きがありました。

岩田明子さん「国がもうちょっと前面に」

蓮見直樹アナウンサー:
1月にはJR東海の会見で知事への反論会見、異例の会見とも言えるわけですけれども、岩田さん、川勝知事の発言は全国的にも注目されていますよね。

ジャーナリスト・岩田明子さん(元NHK政治部記者):
そうですね。今度は“こういう視点”で反論されるんだと毎回興味深く拝見したが、やっぱり繰り返しになりますが、例えばこれだけ災害が増えていたり、それから新幹線自体が開業60周年になると思うんですけれど、老朽化とか、そういう視点で「インフラの二重系化も必要だよね」とか、そういった言葉をもう少し聞きたいんですよね。

それから、あと中下流域の方々の水問題の「懸念はこの点が残っている」とか、そういう話を聞きたいんですけれど、何が引っかかっているのか私たちにはわかりにくいんですね。

ここまでJR東海も丁寧に説明してきたわけなので、ここまで来たら国家プロジェクトですし、国がもうちょっと前面に出てきて、かつJR東海も河川法に基づく占有許可申請を関係自治体と丁寧に話をしながら粛々と進めていったらどうなのかなと思いますね。

川勝知事も2018年だったと思いますけれど、「法に則ります」という発言もありましたから、粛々と進める段階になってしまうのではないかと思いますね。

蓮見直樹アナウンサー:
許可を含めて具体的にどう進めていくか?ということですよね

ジャーナリスト・岩田明子さん(元NHK政治部記者):
それをすることによって利水上もう支障はないんだということを示すことにもなりますし、例えば事業者がゴルフ場を作ったり、ホテルを作ったりする時に地元の方たちにニーズを聞いたり、それからお金をケチらずにこういう風に還元しますという話し合いを一杯やりますから、JR東海もすごく丁寧にやっていけば理解を得られると思うんですよね。

小泉祐一郎 教授「事務方が困っているのでは」

蓮見直樹アナウンサー:
小泉さんは元県の職員で川勝知事に近いところで仕事をしていたわけですけれど、一連の発言についてはどんな印象を持っていますか?

静岡産業大・小泉祐一郎 教授(県職員OB):
県の事務方はちょっと困っているのではないかと思うんですね。というのも、まだこれから許認可申請が出てきて、30項目の未解決と言っている中には、実は許認可上クリアしなければならないことが入っているんですよね。

ですから環境影響評価の時に元々言っていることではあるんですが、それをもう少し詰めていくと、これは絶対やってもらわないと困るということと出来たらやってほしいということがあるので、そこを分けていって、許認可に向けた準備をしないと、今やっているのは単なる対話ですから。これから許認可の本番に入りますから。

私の行政経験からしても、実はまだJRの今の計画のままではちょっと許認可上、もうちょっと修正するなり、対応が必要なものも多分あると見込まれますので、そういう段階に早くいかないと、どんどん遅れていってしまうということはありますよね。

入口鎌伍デスク

蓮見直樹アナウンサー:
2月5日に県が開いた会見ですと、課題はまだまだあるんだという内容でしたよね。

松下翔太郎アナウンサー:
“47項目”という単語を使って先ほどからお伝えしているんですけれど、県がJR東海に対して示しているリニア工事に関する水問題や生態系に関する47の課題、入口さん、これ具体的にはどういうものですか?

入口鎌伍デスク:
元々はJR東海がトンネル工事によって湧き出た水を全量戻しますという発言があったことから、県が2018年11月に水に関する問題と生物に関係する問題の専門部会を立ち上げました。

先ほど小泉さんからJRの資料が足りなかったという話もありましたがその通りで、対話が上手く部分、上手くいかない部分があったため、2019年9月に静岡県からJRに対して大井川への水の戻し方や中下流域の地下水への影響に関わる懸念を列記した47項目の資料です。

松下翔太郎アナウンサー:
その47項目について改めてこちらです。静岡県は残り30項目はまだ解決していないという見解、一方で国としてはすべてについて議論したということで、ここがズレているんですよね。

そしてJR東海ですけれど、開業目標をずっと2027年としてきたんですけれど、2023年12月に2027年以降へと変更しています。理由としては静岡工区の着工の目途が立っていないためとなっています。

小泉祐一郎 教授「知事は発言を拡散しないように」

蓮見直樹アナウンサー:
小泉さん、今後、川勝知事のかじ取りの期待としてはどうですか?

静岡産業大・小泉祐一郎 教授(県職員OB):
発言自体を拡散しないようにしてもらって、今後は知事として自分が権限を持っている河川法の許可、盛り土条例の許可、あと自然環境保全条例の関係とか、そういったことでこれはマストでやらなければならないということについて明示して、あとは事務方と実務者がやっていく段階だと思いますね。対話で解決できる部分とそうでない部分がありますので。

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