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「ダブルスタンダードに映りますかね…」 リニア問題めぐり副知事が“現状認識”を公表 静岡

”現状認識”について会見した森副知事と石川政策推進担当部長

いまだ着工にすら至っていないリニア中央新幹線の静岡工区。その理由は静岡県が大井川の水資源や南アルプスの環境への影響に懸念を示したからに他ならないが、2月5日に森貴志 副知事が会見し現時点での県の認識を公表した。

4年半で議論は大きく進展

国交相に有識者会議の報告を手渡す中村座長(2023年12月)

リニア中央新幹線の静岡工区について、トンネル掘削などの本体工事はおろか、準備工事すら認めていない静岡県。

水枯れといった大井川の水資源への影響や南アルプスに生息する動植物への影響などに関わる懸念が払拭されていないというのが最大の理由だ。

事業主体であるJR東海との協議が膠着したこともあり、2019年9月にはトンネル掘削に伴い発生した湧水を大井川に戻す方法や中下流域の地下水への影響などの懸念点を列記した「引き続き対話を要する47項目」なる確認書をJR東海に送付している。

あれから約4年半。

この間、国土交通省の提案により水資源への影響を話し合う有識者会議と生物への影響を議論する有識者会議が設置され、いずれも議論は終結。他方、JR東海も湧水を大井川に戻す方法として、大井川上流から山梨県内にある発電所に向け水を送っている田代ダムの取水を抑え、トンネル掘削により山梨県側に流出する湧水量と相殺する案を示すなど、着々とゴールに近づいているかに見える。

ゴール間近…と思いきや?

解決済みは17項目に留まるとの認識を示した森副知事(2月5日)

ところが、静岡県はまったく別の捉え方をしているようだ。

2月5日に会見を開いた県の中央新幹線対策本部長を務める森貴志 副知事は、いまだ17項目しか解決していないとの認識を示す。

具体的には、水資源に関わる懸念については26項目のうち17項目が解決済みで、17項目を列記した動植物に関わる問題や4項目を記したトンネル掘削に伴う発生土に関連した懸念はいずれも未解決との見解だ。

水資源に関わる部分については「対話は進捗した」と評価し、「今後は突発的な湧水など、“想定外”に対応するリスク管理とモニタリングについて対話を進める」としている。

ただ、南アルプスの生物に関わる部分は「各項目とも一定の進捗は見られた」としつつ、「影響を予測・評価するための事前調査が不足している」と指摘し、発生土の置き場に関しては「大規模の発生土の位置(置き場)が適正かどうか追及していかなければいけない」と評した。

静岡市長は県と異なる見解

県とは見解が異なる静岡・難波市長(1月12日)

これに対し、森副知事とは正反対の意見を表明しているのが静岡市の難波喬司 市長だ。

かつては県の副知事としてリニア中央新幹線をめぐる問題への対応の陣頭指揮を執っていた難波市長は1月12日に行われた定例会見の中で、水資源に関連した問題について「今後は社会的な合意形成を目指して最終調整を行う段階なので9合目以上に達している」と口にし、生態系の問題についても「新たにものすごく詳細な調査をしないといけない状況ではないと思うので、そういう観点から言って8合目までは行っている」と所感を述べている。

さらに、県が大規模な崩壊を懸念する燕沢の発生土置き場に関しても「だいたい9合目まで行った」との考えを表し、その上で全体として「最後の詰めにある」とまで断言した。

県に苦言を呈した島田市長

県に苦言を呈した島田・染谷市長(2月1日)

また、島田市の染谷絹代 市長は県がこうした見解を出すことを予期したかのように、2月1日の定例会見で「有識者会議の議論の中で残念ながら建設的なアドバイスや提言は県から出ていなかった」と言及し、「後戻りがないよう現実的な進捗を図っていくことが大事」と釘をさしている。

染谷市長が述べているように、このリニア中央新幹線に関する問題をめぐっては、県はこれまで一貫して“課題指摘型”の姿勢を堅持し、解決に向けた提案を能動的にするという動きがほとんど見られない。

このため、県議会では県の“アドバイザー”である専門部会の運営方法を疑問視する声もあがっているが、2月5日の会見で森副知事は引き続き専門部会の意見を重視していく方針を明言した。

伊豆縦貫道とリニアの差は一体?

一方、この日は伊豆縦貫自動車道(伊豆市月ケ瀬~河津町梨本)における環境影響評価に関わる準備書に対する知事意見に関連した質問もあがった。

なぜなら、準備書には「上流部のトンネル湧水の発生により、断層破砕帯に沿った地下水が減少する場合には、温泉の地下水に影響が及ぶ可能性があると考えられる」との記述があるにもかかわらず、知事意見では当該地の観光産業を支える温泉に関わる深い懸念を示さなかったほか、リニア中央新幹線をめぐる工事と同様に「予測の不確実性」に触れた記載もあったものの特段大きな意見を付さず、2023年1月には環境影響評価を終えているからだ。

このため、出席した記者から「『ダブルスタンダードではないか?』という批判にはどう答えるか?」と問われると「ダブルスタンダードに映りますかね…」と言葉に窮し、「『ダブルスタンダードではないか?』ということには明確に答えられないが、南アルプスは特殊で慎重にしていきたい」と声を絞り出した。

森副知事は「(47項目が)均等な内容のものというわけではなく濃淡があると思っている。47のうちの17の濃度が、単純に分数の47分の17というわけではないと思っている」と言うが、47分の47になるのはいったい何年後の話なのだろうか。

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