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ストレスや不安で指の皮をむしり出血している人も…災害弱者に寄り添う避難対応を 静岡

障害者施設の避難

能登半島地震は発生からまもなく1カ月となります。避難生活が長引く中で懸念されるのが災害関連死をはじめとする二次被害の問題です。

特に高齢者、持病のある方、障害を抱える方などのいわゆる災害弱者の方へのケアは課題とされつつも、様々な事情でなかなか対応が進まない状況にあるようです。

被災地の現状から改めてこの問題について考えてみたいと思います。

災害弱者への支援の難しさ

能登半島地震から4週間が経過しました。

様々な報道が連日続けられていますが、今回は災害弱者と位置付けられる支援が必要な人たちに目を向けてお伝えします。

施設「精育園」の内部

精育園・田中こず恵 部長:
自閉症の方が落ち着いて過ごせるような空間として使っていたんですけど、防音で外からの音が聞こえにくい部屋の構造にしてあって、それもこんな状態なので今は全く使えない

知的障害者施設「精育園」

石川県穴水町から山道を進むと見えてくるのが、知的障害者などが生活する施設です。

入居者に大きなケガはありませんでしたが、日常は奪われてしまいました。

田中こず恵 部長

精育園・田中こず恵 部長:
絵が好きな方は絵を描かれたり、本人がお手伝いできることをしてもらうことで自分自身の自己肯定感を高めたり。今はまったくそういう活動ができない状態

入居者がそれぞれの事情に合わせて行っていた行動はできません。

居住スペースの被害もひどく、集団での生活を余儀なくされていますが、それも難しい入居者もいるといいます。

避難中の障害者

精育園・田中こず恵 部長:
一人は体育館への避難を(拒否して)どうしても動けないので、最初からあそこにずっといる。ストレスで(手を)むしってしまったり、血を流しちゃっている

職員が入居者の生活を支えていますが、職員も被災者。2次避難先が決まったとしても、入居者が受け入れてくれるかはわかりません。不安な日々が続いています。

現地の実態は?

災害対応NPO・松山文紀さん

災害対応NPO「MFP」松山文紀さん:
一部住民の中では「ミステリーツアー」と言われるほど避難先の情報が少なくて、少ないがゆえに(二次避難所に)行くことに踏ん切りがつかない方もたくさんいます

報告会の参加者

1月20日、石川県珠洲市で支援活動を行ったNPO法人の活動報告会には障害を抱える方の家族も参加していました。

参加者:
他人事ではない。息子が知的障害と身体障害で車いすの生活をしているので、本当に切実に感じまして。障害がある人たちは環境が変わることが一番パニックを起こしたりする原因になるのと、あとはトイレ。いま車いすで体育館で使えるトイレがどれくらいあるのかということもすごく心配で

施設はあっても人手が足りない

石川県珠洲市の避難所

行政も見直しの検討を始めています。

掛川市健康福祉部福祉課
水野正幸 課長:
能登半島地震を受けて、大きく課題としてとらえているのが、掛川市内に41カ所福祉避難所があるが、すべてが開設されるわけではない。できない。もちろん建物の被害もあるし、そこで従事している職員のマンパワーもある。これだけ準備していても、実際には数カ所になってしまう恐れがあるということで、今後どう対応していくのか大きな課題としてある

福祉避難所開設訓練(2016年・掛川市)

特に心配しているのが人手不足です。災害時には市内にある特別支援学校も生徒や家族の避難所として想定されていますが、先生が被災し、不在となった場合どう運営するのか課題となっています。

掛川市健康福祉部福祉課
水野正幸 課長:
障害者のケアについては、施設の事業所の方々、高齢者については介護支援専門医、いわゆるケアマネージャーや事業所の職員と十分協議し、相談させてもらって、どんな体制でどんな形で運営していくのが一番良いのか進めていきたい

普段と違う環境でパニックに

知的障害者施設の実態

石川県穴水町の知的障害者施設を取材したところ、知的障害、発達障害の方は普段と違うことに強い抵抗感を持ち、パニックになりやすいとのことでした。

ストレスと不安で、自ら皮をむしって指から出血している人や、不安から職員と手をつなぎにくる入居者も居ました。

また、こだわりが強くて、他の入居者が生活する場所に移ることができない入居者も居ます。職員も被災しており厳しい状況が続いています。

要配慮者への支援 国の対応

体に障害のある方や高齢者の方も災害時の避難は、容易ではありません。

こうした要配慮者の避難については1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに認識されるようになり、福祉避難所の設置の検討がされた2004年の中越地震で初めて設置されました。
      
そして2011年、東日本大震災で急速に進み、2013年には国が福祉避難所の指定を義務付け2014年に静岡県もマニュアルを作成しました。

更に2016年4月に国がガイドラインを公表、その月に熊本地震が発生し要配慮者への支援が注目されました。

春風亭昇太さんと笠井信輔さん

落語家・春風亭昇太さん:
避難した時に障害者の方が今置かれている状況を理解しているか、ひとりひとり症状も違うでしょうから対応は難しいですね。また、こうした対応が実際の災害があって初めて進んでいくと言うのは少し悲しいです。海外の事例もあるのだから、そうしたものも参考に早め早めに準備を進めて欲しいと思います。

ペットが家族同様と言う人もいるだろうし、多様性を認めてあげられるといいけど、日本人の寛容性が無くなって来てしまっている点が心配

元フジテレビアナウンサー・笠井信輔さん:
能登半島地震では避難所の半数が自主避難所とも言われていて、それだけ指定避難所の開設も大変なのかもしれないし、各自で備えておく必要があると感じます。

それと一定数こうした障害のある方がいるのが社会だと認識しておかないと。

避難生活は多くのストレスを抱えると思うけど、より多くのストレスを抱える人達がいることを理解することが大切。「被災者を救えるのは被災者しかいない」から。
また、マニュアル作りが進んでいくことは良いことだけどマニュアル通りにできるかの検証もしていかないと

助ける側、助けられる側、どちらの立場にも

避難所開設訓練(2022年・静岡市)

こうした動きを受け、行政だけではなく住民の意識にも変化が出てきており、訓練でも要配慮者への支援が取り入れられつつあります。

こちらは静岡市駿河区で2022年行われた訓練の様子です。

「要配慮者はこの一般受付ではなく奥に要配慮者の受付がありますので、そちらで受付を」と案内しています。

避難所となる体育館には、高齢者や子供、障害者も多く訪れます。訓練ではどんな支援が必要か確かめ、個室のスペースが適している場合はそこへ案内する動線などを確認していました。

訓練の中では、車いすの参加者から段ボールベッドでは床ずれになってしまうなど、当事者でないと気づけないような具体的な意見も上がっていました。

静岡大学防災総合センター・岩田特任教授

この訓練を視察した静岡大学防災総合センターの岩田特任 教授は「多様な人を巻き込みながら本当に必要なことをみんなで考えてやっている。本当に意義がある。助ける側、助けられる側、どちらの立場にもなりうることを考えておいてほしい」としています。

静岡県の障害者の実態

静岡県の人口は約360万人ですが、2021年のデータで身体障害者12万1609人、知的障害者3万6743人となっています。

自閉症や発達障害などの方の人数は把握できていませんが、療育手帳や精神保健福祉手帳は2020年度末で4234人に発行されています。

福祉避難所設置の課題

要配慮者が安心して避難生活を送るために災害時にはバリアフリー化され、福祉サービスが受けられる「福祉避難所」が開設されることが求められています。

掛川市では41カ所の福祉避難所がありますが、様々な課題があり全てが開設できるわけではないようです。

特に人手不足が心配だそうです。対応する福祉班は遺体安置所やボランティア業務も抱えているということです。

災害の教訓を活かし、私たちも「助ける側、助けられる側、どちらの立場にもなりうる」ことを意識して備えを見直す時が来ているように感じます。

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