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「スラムのイメージを変えたい」 家の屋根を素材にかわいいバッグづくり…貧困者の自立支援を 静岡

バンコク「クロントイ」で作られているバッグ

タイの首都・バンコクには貧しい人たちが暮らす、いわゆる「スラム」が多くあり、首都の人口の5分の1が住んでいるといわれている。そのスラムの住民が作ったバッグが静岡のイベントで注目を集めた。バッグの素材はスラムで暮らす彼らの家の屋根などでできている。バッグで日本とタイをつないだ女性の願いとは…。

タイのスラムと日本をつないで

島田市で開かれたイベント

2023年11月、静岡県島田市で雑貨などを販売するイベントが開かれた。来場者の注目を集めていたのはカラフルな透明のバッグだ。ブランドの名前は「FEEMUE(フィームー)」。タイ語で「匠の技」や「腕のいい」などの意味で、バンコクのスラムに住む住民たちが製作している。

人気のバッグ「FEEMUE(フィームー)」

イベントでは「バッグの色や素材の透け感がかわいい」「友人が使っているのを見てかわいいと思って」などと好評で若い女性などが商品を購入していた。

タイのボランティア時代の菊池さん(提供:菊池歩美さん)

バッグを販売するのは藤枝市の菊池歩美さんだ。菊池さんは2015年から5年間バンコクに住んでいた。現地でタイ語を習得し、バンコクのスラムにあるNGOで3年間ボランティアをしていた。スラムについて少しでも知ってもらおうと、日本に帰国後に商品の販売を始めた。

菊池さんは「商品はあくまで“入口”だと思っているので、これをきっかけに何か考えてもらえたら」と話す。

大通りから路地に入ると…

バンコク最大のスラム「クロントイ」の朝(タイ)

菊池さんがボランティアをしていたのがバンコク最大のスラム「クロントイ」だ。

午前7時。クロントイの大通りは朝食を取る人たちや野菜を買う人たち、通勤前の人たちで賑わっている。

狭い路地に家が密集

その大通りから一本脇道に入ると狭い路地の両側に家がひしめき合う光景が広がる。トタンなどで建てられた家がひしめき合い、道は人ひとりがすれ違うのがやっとの狭さで、まるで迷路のようだ。ゴミが放置され、野良犬や放し飼いのニワトリもいて、衛生的な環境とはいえない場所もある。

ここでは建設現場や港湾などで、低賃金で働く労働者など約10万人がひしめき合いながら暮らしている。生活苦から子供に十分な教育を与えられず、その環境から抜け出せない人たちも多くいる。

日本のNGOがスラムの人たちを支援

事務所の2階が縫製所

日本のNGO「シーカー・アジア財団」はこの状況を改善しようとしている。スラムの人たちの生活の向上や教育支援を行う団体でクロントイに事務所を構える。ここで菊池さんはボランティアをしていた。

そして、FEEMUEの商品をつくる縫製所はこの事務所の2階にある。スタッフは5人。全員スラムに住む女性で、商品づくりはスラムでの雇用創出につながっている。

透明のタープ素材

バッグなどには、この地区で家の外壁や屋根に使われる透明のタープ素材が使われている。

シーカー・アジア財団の山田大貴さん

シーカー・アジア財団の山田大貴さんは「スラムというネガティブなイメージを持たれる暗い場所だが、そのイメージを少しでも良いものに変えて行けたらと商品を作っています」と話してくれた。

縫製の収入を子供の学費に

ヤオさん

縫製所で働いているのがヤオさんだ。

ヤオさんは縫製の仕事をして30年以上のベテランだが、かつては建設現場で肉体労働をしていた。「建設現場で働いていた当時は本当に疲れ果てていた。学歴もなく選べる職業は限られていた」と話す。

そんな時、友人からシーカー・アジア財団での縫製の仕事に誘われた。手に職がつくことに魅力を感じて、それ以来この仕事を続け安定した収入を得てきた。

ヤオさんと孫

ヤオさんは週に5日間働いている。仕事が終わると近くの幼稚園にいる孫とともに歩いて5分ほどの自宅に帰宅する。両親の代から住んでいて、今は夫や孫たちと5人で暮らしている。縫製で稼いだお金で、娘と息子を専門学校や大学に行かせることができた。

ヤオさんは「縫製所で働き政府からのローンを全て返済した。息子に大学を卒業させてあげることができたことを、とても誇りに思っている」と話す。

映像を見る記者とヤオさんと孫

これまで自分が作った商品が、日本でどう受け入れられているのか見たことがないというヤオさん。

菊池さんの日本での販売の様子や日本で商品を愛用する人たちの様子を映像で見てもらった。

「とても誇りに思う。さらに上を目指す励みになります。私たちは今以上のことができるがんばる力をもらいました。これからもがんばり続けます」とうれしそうに笑顔を見せた。

「輪が広がるといいな」

シーカー財団が運営する図書館

商品を販売した収益はシーカー・アジア財団が行う子供の教育支援や財団が運営する図書館の本の購入に使われている。菊池さんは販売した売り上げについては、費用を差し引いてすべて寄付している。支援の輪を広げていくことが願いだ。

菊池歩美さん

菊池歩美さん:
肌で感じてきたことを自分の言葉で説明できる点では私だからできることなのかと思う。皆さんに伝えていくことで皆さんが何かを感じて次の行動につなげてもらう輪が広がるといいなと思います

野良犬やゴミが放置されている環境

バンコクにはクロントイを含めて2000カ所近いスラムに約200万人が住んでいて、バンコクの人口の5人に1人がスラムに住んでいるとも言われている。

規模は小さいものの、菊池さんたちの取り組みは着実に成果を出しながら続いている。

*FEEMUE(フィームー)の商品は静岡県内を中心にイベントに出店して販売しているほか、インターネット上でも購入可能

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