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有識者会議がJRに”お墨付き”も…リニア問題 解決の糸口は? こう着から6年 県の思惑はどこに 静岡

リニア問題のイメージ

JR東海のホームページによると「南アルプストンネル静岡工区において、大井川の水資源の影響について、静岡県、流域市町等の理解が得られず、実質的に工事が進捗しない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています」との説明があります。

そして「国土交通省が設置した『リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議』に真摯に対応することなどにより、地域の不安を解消し問題の早期解決に努め、静岡工区の早期着工と品川・名古屋間の早期開業に向け、取り組んでいきます」としています。

リニア開業の遅れに関して、静岡県への風当たりが強くなってきている感じもしますので県民として改めてリニア問題を整理してみたいと思います。

静岡工区だけが着工できていない?

リニア中央新幹線について、11月7日に開かれた国の有識者会議、最終報告書のとりまとめは座長に一任する方針となりました。

しかし、まだ問題解決の糸口はハッキリと見えていません。

リニア新幹線

品川-名古屋間を40分で結ぶとされるリニア中央新幹線。

静岡県内の工事だけが始まらず、当初目標としていた2027年の開業は事実上不可能となっています。

南アルプス

県は、リニアのトンネル工事が「南アルプスの生態系へ影響を与える」などと訴え、
国は有識者会議を設置して議論を続けてきました。

有識者会議

そして11月7日、有識者会議は報告書の最終的な取りまとめを座長に一任。議論は事実上終結しました。

静岡県・川勝平太知事

静岡県・川勝平太 知事:
十分な議論がなされないまま取りまとめられようとしていることについては、非常に残念に思っています。有識者会議の議論は尊重いたしますが、それに従うということを一度も言ったことはありません。

JRの方針にお墨付きを与えるような内容の報告書に川勝知事は不快感を示し、引き続き県の専門部会で議論する考えを示しました。

JR東海・丹羽俊介社長

一方、16日 会見を開いたJR東海の丹羽社長は。

JR東海・丹羽俊介 社長:
せっかく有識者会議で専門部会の先生も交えて議論がなされたので、同じような議論をもう一度専門部会で繰り返すのではなく、建設的な議論をしていければと

川勝知事と丹羽社長

国やJR東海との温度差が浮き彫りとなっている静岡県。

リニア新幹線をめぐる問題解決の糸口は見えない状況です。

リニア中央新幹線とは

リニア新幹線とは

改めてリニア中央新幹線とはどのようなものか整理します。

研究の開始は60年以上前の1962年。新幹線の次の超高速鉄道として研究がスタートし、2014年、国が品川-名古屋間の工事着手を許可しました。

最高時速500km超で品川-名古屋間を40分で結び、東京-大阪間は67分という、まさに超高速の新幹線となります。

当初の計画では、品川-名古屋間について2027年開業を目指していましたが、静岡工区(=約9km)が着手に至っていないため難しい状況となっています。

-リニア新幹線の開業が遅れてしまうことについて

バービーさん:
静岡問題とか言われて気の毒ですけど。東京からすると早くなんとかして欲しいな

元フジテレビアナウンサー
笠井信輔さん:
根底には静岡県に駅ができないことがあるような気がする

入口鎌伍 報道デスク

-なぜ、静岡工区のみ工事が始まっていないのか。

入口鎌伍 報道デスク: 
端的に言えば県が許可を出していないからですが、すべては2017年10月10日に始まりました。

県内で工事を始めるに当たって必要なJR東海、県、利水団体との協定締結が間近とみられる中で、川勝知事が突如として定例会見で「水問題に関して具体的な対応がなく心から憤っている」とJRへの怒りをあらわにし、6年経った今も県が工事を許可していないからです。

静岡県の懸念-水問題と生態系

県の二つの懸念事項

なぜ県は工事を認めないのでしょうか?県はこれまでたびたび懸念を示していました。それは大きく分けて2つあります。

静岡工区の工事は、南アルプスの1400mの深さにトンネルを掘ることになるわけですが、懸念されている1つが「大井川の水問題」、もう1つが「南アルプス生態系問題」です。

この問題について県とJRで議論を重ねたものの平行線で進まなかったため、いずれの問題も国が有識者会議設置することとなりました。

笠井信輔さん:
国の有識者会議と言うのはどのようなメンバーなの?

入口鎌伍 報道デスク:
国が恣意的に選んだと言うことはなく、県の専門部会メンバーも名を連ねています

笠井信輔さん:
その人たちを含めて有識者会議が結論を出したなら前に進める時期に来ている感じですね

バービーさん:
今の状態だと知事が駄々っ子のように見えちゃいますね。川勝知事に諫言できるような人はいないのですかね

入口鎌伍 報道デスク:
残念ながらいないと言えそうです。4期14年の知事なので、現実的には県は組織として知事の指示に沿って動いているという感じです

大井川の水問題

県が懸念事項としている点についてそれぞれどういう問題かなのか、改めて整理していきます。まずは、「大井川の水問題」について入口報道デスクお願いします。

入口鎌伍 報道デスク:
一番の争点となったのがトンネル本体に先駆けて掘削する先進坑と呼ばれる断面の小さな作業用トンネルが貫通するまでの約10カ月間に湧水が山梨県側に流出してしまうという問題です。

この問題について国の有識者会議は「先進坑貫通までの約10カ月間に県外流出が
発生した場合でも中下流域の河川流量は維持される」との報告書を2021年にまとめました。

ただ、予測には不確実性が伴うことや流域の市や町の心情的な部分に配慮してJR東海は上流にある田代ダムの取水を抑えることで県外流出量と相殺するいわゆる“田代ダム案”を2022年4月に提示しました。

そして、2023年10先月には「ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーとの協議がまとまり流域の市や町からも賛同が得られた」と発表しています

染谷島田市長と川勝知事

この件について流域市町も当初はJRに不信感を抱いてこともあったのですが、ここに来て好意的に評価に転じてきているのも事実です。流域市町のひとつ島田市の染谷市長は「利水関係者の理解が得られ、同意が得られるよう期待」としています。

一方、川勝知事は「採掘中の全量戻しとは違う。JRがリニア問題を遅らせている」などと発言しています。

笠井信輔さん:
水の問題に関しては流域市町の方も心配でしょうし、万一のときの補償問題はどうなっているの

入口鎌伍 報道デスク:
そうした点についてもJRは出しているのですが、そこまで焦点があたる段階になっていない状況です

生態系生態系の問題

もう1つの懸念事項「南アルプスの生態系への影響」についてもお願いします。

入口鎌伍 報道デスク:
南アルプスの生態系生態系の問題については11月7日に議論が事実上終結しました。
最終的な報告書の取りまとめは座長に一任となったものの、案の段階で3つの論点に対していずれも「JR東海の進め方は適切であると判断できる」との文言が記されていて、JRの方針にお墨付きを与える内容となっています。
  
ただ、川勝知事は9日の定例会見で「有識者会議の議論は尊重するが『従う』といったことは一度もない」と述べています。

笠井信輔さん:
川勝知事は有識者会議の結論に従うのは負け、自分の主張を通すのが勝ちと言う二律背反的なスタンスに陥っている感じ。政治家はそうじゃなくて落としどころを考えて進めて欲しいね

入口鎌伍 報道デスク:
外堀が埋まりつつある中で意固地になっている印象は否めないです

リニア開通のメリットは静岡県にも

リニア開通のメリット

静岡県にはリニアの駅はできませんが、リニア開通によるメリットとして国土交通省が次の内容を発表しています。

1つが県内の新幹線停車本数は1.5倍なるというものです。静岡駅では現状20分に1本が12分に1本となります。そして、10年間で1679億円の経済波及効果があるというものです。

入口鎌伍 報道デスク:
これはあくまでも国交省の試算ですが、JR東海の丹羽社長は「違和感ない」「あり得る範囲」と所感を述べていて、会社としても「便利なダイヤを検討したい」との考えを示しています。

笠井信輔さん:
川勝さんも振り上げた拳をおろすきっかけが欲しいと思うので”のぞみ”を止めるとかいいんじゃないの。川勝さんにお土産あげないと進まない感じがしちゃう

バービーさん
やっぱり県民がどう思っているのかを伝えることが川勝知事を動かすには必要だと思いますね

入口鎌伍 報道デスク:
水問題、環境問題いずれも専門的過ぎて県民が置いてけぼりになっている感じがします。

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