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超高齢社会となり、高齢ドライバーによる交通事故は社会問題の一つとなっています。
身体能力や老化の進み具合は人それぞれであり、交通インフラなどの生活環境の違いに加え 免許を返納した場合のサポートも自治体により様々です。
高齢ドライバーの免許返納問題について考えます。
◆高齢ドライバーによる事故の割合は増加

静岡県内でも2023年10月に2件の高齢ドライバーによる事故がありましたが、後を絶たない高齢ドライバーの事故と運転免許の返納についてお伝えしていきます。
まずは衝撃的なこちらの映像からご覧下さい。
これは、北海道警察本部がYouTubeの公式チャンネルで公開した高齢ドライバーのアクセルとブレーキの踏み間違い事故の映像です
―西原さん、率直なご感想を?
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん(元牧之原市長):
この映像は幸い自損事故だったようだけど、池袋のような痛ましい事故があったから私自身 気を付けなければと思っています

高齢ドライバーの事故というと、2019年4月に東京・池袋で母子2人が死亡した事故が多くの方の記憶に残っていると思います。当時87歳の男性ドライバーが運転する乗用車が暴走した事故です。
県内でも10月に三島市で90歳のドライバーが運転する車に男性がはねられ重体となる事故や、浜松市では75歳が運転する車が小学生3人をはねる事故などが起きています。

ー西原さんは車の運転で衰えを感じる事はありますか?
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
70歳以上の高齢者ドライバーの講習案内が来ましたよ。まだ69歳だけどね、来週受けてきますよ。警察もこうやって返納を促すように活動している。衰えというのは特に感じないけど視力は落ちてきていると感じるね
過去10年間に県内で65歳以上の高齢ドライバーが起こした事故件数についてみてみましょう。
事故件数自体は減っていますが、事故全体に占める割合は10年前より増えています。
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
高齢者は増えていくわけだから、これからますます増えてくるでしょうね
◆高齢者の免許更新のための講習会

まだまだ運転に自信はあるという高齢者も多いと思いますし、衰えを認めたくないという心理もあろうかと思います。
そうしたことも考慮し、高齢者は免許更新時に高齢者ならではの講習が必要となっています。どんな講習か取材をしてきました。

70歳以上の高齢ドライバーが運転免許を更新するためには、高齢者講習の受講が義務付けられています。
講習は、自動車教習所などでほぼ毎日行われ、内容は安全運転のための講義のほか
動体視力などの適性検査、それに実際に車を運転する運転指導です。

さらに75歳以上のドライバーは、認知機能の検査も受講しなければなりません。
事前に示された16種類のイラストをいくつ記憶しているか、当日の年月日、曜日を正確に答えられるかなどをチェックします。
そして最後に、実際に教習所のコースに出て運転技術の指導を受けます。
交差点の右左折や段差の乗り上げた時の対応など、基本的な課題をクリアしながら、
指導員からアドバイスを受けます。

指導員:
道の真ん中を通ってガード下の段差見えます?
受講者:
怖いよね、何となく頭がつかえそうで
指導員:
乗り上げたらすぐ止まりましょう

県警交通部によりますと、県内では2023年に約13万人が高齢者講習を受けたということです。

受講者(80代女性):
前回でやめるつもりでいたけど、やっぱりもう1回取りたいと思って。病院通いが仕事のようになってしまっているんですけど、主人が去年免許を返納したので病院に乗せていかなきゃ
受講者(90代男性):
不便だねぇ、ちょっと外に行くにもバス停が真ん前にあればいいけど そうじゃないから不便だよ、車がないと。(免許返納を)息子に言われてる。「今度は不合格だ」と言われたけど 、なぁに 大丈夫だ!
◆免許返納後のサポートは?

90代の方でも運転免許更新に自信満々の様子で、なかなか運転免許返納に踏み切れない様子がうかがえました。公共交通が少ない、病院通いが必要などといった事情もあるようです。
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
公共交通機関がちゃんとしてないと買い物、病院、孫に会いに行く、何にせよ自家用車で行くことになってしまう
ここで静岡県の運転免許返納件数の推移をご紹介します。
今のところピークは2019年の2万1000人となっていますが、これは池袋の暴走事故が大きく影響しているようです。
21年・22年はコロナ禍で高齢者が公共交通機関を避けたため減っています。
返納の理由は「身体能力の衰えを実感した」が最も多く、次いで「必要なくなった」「家族の勧め」「講習が面倒」などとなっています。
取材した記者の経験では「家族の勧め」ではうまくいかなかったようで、「同年代の仲間や医師から勧められると応ずる人が多い」とのことでした。
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
池袋の暴走事故の影響で免許返納しているというのは自己判断ができているということ。これが認知症になると自己判断できなくなってしまう

運転免許を返納した方には車に代わるものが必要となりますので、そうした方への支援も欠かせません。
自治体からバスやタクシー代の補助や、企業からもバスやタクシーの割引・シルバー定期の早期発売などの様々なサポートがあります。
例えば長泉町では、65歳以上で免許返納した人に対して「運転経歴証明書の交付手数料の助成」「タクシーバス利用券 1万円分(100円×100枚)の交付」「タクシー運賃の半額助成 年50回(1回の上限600円)」といったサポートを提供しています。
総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
自治体によって差がありますね、財源の問題があるし。静岡市などはないですしね。免許返納者だけでなく高齢者の交通弱者を出さないような取り組みが必要です
◆新たに「サポートカー」限定免許を導入

また、免許を返納することがどうしても難しいという方のために2022年5月から「サポートカー」限定免許への切り替え制度も導入されています。
これは衝突被害軽減ブレーキやペダルを踏み間違えた時の加速抑制装置など、先進的な安全技術を搭載した「サポートカー」のみを運転できるという免許です。

総務省地域力創造アドバイザー・西原茂樹さん:
自動車メーカー側も行政側も協力して、痛ましい事故が起きないようにして欲しい。メーカーの技術は日進月歩で進んでいるので期待したいですね
テクノロジーの進歩により、自動車の安全性は高まり死亡事故も低下傾向ありますが、買い物や通院など高齢者が生活をしていくうえでどのような移動手段を整備していくのが望ましいか、社会全体で考えていく時期が来ていると思われます。