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静岡県沼津市の議会を混乱・空転させた議員の”タケノコ騒動”は未だに収束していません。
今回、二度の懲罰処分を科されたベテラン議員は「懲罰は勲章」と持論を述べていたにも関わらず、処分の取り消しを求めて知事に「審決」の申請を11月1日に行いました。
知事が申請を受理するか否かにより今後の展開が変わってくるものの、いずれにしても
まだまだ続きそうな”タケノコ騒動”について改めてお伝えします。
「懲罰は勲章」…”タケノコ騒動”のこれまで

-2023年10月に沼津市議会を揺るがせた“タケノコ騒動”は覚えてますよね?
ゴルゴ松本さん:
処罰1日とかで終わったんじゃないですか。まだ続いてるの?

11月1日、この”タケノコ騒動”をめぐって新たな動きがありました。そこで改めてこれまでの経緯を簡単に振り返ります。
渦中にあるのは沼津市の江本浩二 議員です。当選5回のベテランですが、9月27日の本会議で「市の土地のタケノコを掘り 販売して利益を得た」という趣旨の発言をしました。

これに対し、沼津市議会は10月16日「議会の品位を汚した」として懲罰動議を可決しました。
ところが、陳謝処分を科された江本議員はこれを拒否したため、出席停止処分(1日刊)となりました。
-懲罰の拒否というのはよくあるものですか?
総務省地域力創造アドバイザー
西原茂樹さん(元 牧之原市長):
私は県会議員14年務めたけど無かったですね、品位がない人はいたかもしれないけど

ちなみに江本議員は出席停止処分が科された後にはこんな話をしていました。
江本浩二 議員:
私はね、まず懲罰は勲章だと思っています。だから(過去の懲罰も含め)5回か、4回か、3回かあまり記憶がないんですけれど、すべて勲章だと思っています
懲罰処分の取消し求める「審決」を申請

雄弁に語っていた江本議員ですが、11月1日に新たな動きがありました。
江本議員が訪れたのは静岡県庁です。 今回 科された陳謝と出席停止、2つの処分取り消しを求め 川勝知事宛ての「審決」の申請書を提出しました。
「品位の定義が不明確で発言の自由を侵害」

申請書提出後に江本議員は会見を開き懲罰の取り消しを求める理由を述べました。
江本浩二 議員:
品位を汚したということが懲罰に当たるとしています。しかし、品位についての定義が漠然・不明確で、品位とはどのようなことを以て定義されているものであるのか、また、それがどの程度、汚されたとするのかの説明・議論も欠落しております。
この品位という漠然・不明確な概念を根拠として懲罰を科すことは、漠然性ゆえに無効の法理、過度の広汎性ゆえに無効の法理に該当して、表現の自由、そして議員の発言の自由を侵害する違法な議決である

-江本議員の主張を聞いてゴルゴさんはどう受け止めましたか?
ゴルゴ松本さん:
品位と言えば上品か下品かに分けられると思うけど、市民に選ばれた議員が「それは、あなた品がないですよ」って決まったことなんだから、素直に受け入れて…そのあとは「沈黙は金」と言う言葉があるように黙っていれば良いと思いますけどね
-西原さんはいかがですか?
総務省地域力創造アドバイザー
西原茂樹さん:
普通の感覚ならゴルゴさんの言う通り「決めたんだから従わないのはおかしい」となるのだけど、私も審決の申請というのを初めて聞いたので少し調べてみました。
そうしたら、議会の中で決めたことは重んじるということになっているのだけど、※令和2年の最高裁でそれを覆すような判決が出ていて、この江本議員はそのことを勉強して知っているのだと思う。ベテラン議員だしね。弁護士もついているとは思うけど
※審決の申請の対象となり得るのは従来、「出席停止は司法審査の対象外」という考えを示した1960年の最高裁判決に基づき、除名を受けた場合に限り認められるとされてきた。しかし、最高裁は令和2年に「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるべきというべきである」と60年ぶりに判例を変えた。
申請が受理されなければ訴訟?

11月1日に「審決」の申請をしたこのあとの流れですが、まずは川勝知事が申請を「受理する」か「しないか」の判断をします。
仮に「受理する」となった場合は、知事が自治紛争処理委員を任命し、申請の妥当性を判断することになります。
ただ、過去の判例を見ても除名と出席停止は審決の対象となっていますが、陳謝は対象となっていません。
今回の場合は、陳謝拒否があったうえでの出席停止なので、この辺りをどう判断するかというのもポイントとなりそうです
-今回はどうなると見ていますか?
総務省地域力創造アドバイザー
西原茂樹さん:
多分受理されると思います。軒先で門前払いできないでしょう。但し、どのような委員を選ぶか、どのように委員会を進めていくかといった点について、県も何十年もやったことがないそうだから、どうなっていくのか大変だと思う。
江本議員は「いろいろなことを知っているんだ」ということを示すのが目的かもしれないけど、議会で議論すべきはこんなことではないということを自覚して欲しいよね
なお、江本議員は申請が受理されなかった場合「訴訟も視野にいれている」としています。 議会の空転を招いた“タケノコ騒動”、しばらくは収まりそうにありません。