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魚肉にガブリとかぶり付いてほしい。さかなのまち焼津の老舗が作ったのは、キャンプにぴったりカツオのステーキ「鰹肉」です。一緒に付いてくる「塩」が、カツオのうま味を凝縮した希少品でした。


やいづキャンプ飯プロジェクト
焼津の水産加工会社が集まり、先人たちの加工技術を生かして、キャンプにぴったりの食品を開発。
キャンプはもちろん災害時にも短時間で食べられる優れものです。
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やいづキャンプ飯プロジェクトのサイト
こだわりは“ぽっちゃり”したカツオ
明治35年創業。静岡・焼津市で水揚げされるカツオを、浜のすぐ前で「なまり節」に加工していたのが「カネオト石橋商店」の始まりです。

カネオトという名前は初代の石橋音吉(おときち)にちなんで。2代目の頃には大阪の市場で、競りにかけられるまでもなく、その前に高値で買い取られるほどになり「最高屋」と呼ばれるまでになったそうです。

そんな歴史を嬉しそうに話してくれたのは、4代目の石橋利文さん(61)。
やいづキャンプ飯「鰹肉」の発案者です。

鰹肉の元になっているのは「なまり節」です。なまり節は焼津の伝統的なカツオの加工品。「生のカツオを利用した節」なので、生利節(なまりぶし)と言われるそうです。
カネオトでは新鮮なカツオを丁寧に開き、ゆでた後、細かい骨まで取り除きます。

なまり節を繰り返しいぶして水分を抜いていくとカツオ節になります。つまり、なまり節はカツオ節になる前の状態ですが、同じカツオでも魚選びが違うと石橋さんは話します。
カネオト石橋商店 4代目・石橋利文さん:
カツオ節が脂少なめのカツオを使うのと対照的に、なまり節は脂がたっぷりのったカツオで作ります
脂がのった“ぽっちゃり”したカツオを使うのが石橋さんのこだわりです。

シンプルな加工法ですが、魚をゆでる釜はいつでも清潔に。骨とりは丁寧に。単純だからこそ丁寧な仕事が味に反映されると考えています。
豊富な商品展開 原点は「なまり節」
サバのみそ煮やカツオの「はらも」(トロにあたるお腹の部分)など、なまり節以外の商品展開も豊富です。全て、なまり節の製法が原点になっています。

カネオト石橋商店 ・石橋さん:
サバのみそ煮はなまり節を作る手法で、下ごしらえに手をかける。丁寧に下処理をしているから家庭で作るみそ煮と違って長期保管ができます

キャンプ場で魚をがっつり食べてほしい
こうした商品開発のアイデアを常に練っていた石橋さんだからこそ生まれたのが、やいづキャンプ飯「鰹肉 with 鰹の恵み塩(700円)」です。
なまり節をステーキのように厚めにスライスし、オリーブオイルに漬けた商品。そのままフライパンや網で焼いて、豪快にかぶりつきます。

カネオト石橋商店・石橋さん:
サラダにとかではなく「がっつり肉食えよ!」と。アニメに出てくるようなマンモスの肉に豪快にかぶり付くイメージ。キャンプ場ではどうしても「肉」を選びがちですが、魚を食べてほしいというのがテーマでした
常温保存できるのもアウトドアでは嬉しいポイント。オリーブオイルが入っているので、オイルごとフライパンに投入できて調理が楽です。
表面に色が付く程度に焼いたら、豪快にフライパンからぱくり。中はほんのりピンク色でした。

石橋さん自身がキャンプ歴40年以上のベテラン。火を囲んで仲間と語らう輪の中心には、どんな食べ物が合うのか、イメージができていました。
ただ、この商品を唯一無二にしているのは、一緒に付いてくる「塩」だと言います。

カツオのうま味が凝縮された「恵み塩」は、カネオト石橋商店のもう一つの人気商品「酒盗」(カツオの塩辛)があったからこそ生まれました。
カツオのうま味を凝縮した塩
恵み塩は酒盗を作る過程でできた塩。石橋さんの自信作です。

酒盗は、なまり節を作る際に取り除いたワタ(カツオの内臓)をキレイに洗い、内容物を取り除き、約1日塩漬けにします。
カネオトの酒盗は利文さんの祖母、花子さんが作り始めました。なまり節を作る合間に、従業員と一緒にせっせと作っていました。その姿を利文さんも小さな頃から見ていました。

カネオト石橋商店・石橋さん:
自分たちも食べるから、本当に丁寧に作っています。嬉しいことに評判になって、この地域では一番、焼津でも一番になって、日本でも一番と言われる日は夢じゃないと思っています

ただ、その製造過程で残る塩はこれまで捨てていました。
塩にはワタの水分とともに、うま味も溶け出します。
石橋さんはこの塩を乾燥させれば、うま味が詰まった特別な調味料ができると確信していました。

カネオト石橋商店・石橋さん:
塩辛が調味料として使えるのはわかっていました。キャビアにも似た塩味でカナッペにも使えます。その製造過程で出る塩を乾燥させて食べてみたら、とてもおいしかったんです
恵み塩は焼津市内で開かれた地元の食品業者と都内のシェフとの事業マッチングで、注目を集めました。
まだ一般販売はしていませんが、都内のイタリアンレストランのシェフの目にとまり、直接卸して使ってもらっています。

カネオト石橋商店 ・石橋さん:
魚肉だけの商品なら他のなまり節業者だって作れる。塩があるからこそ酒盗を扱うカネオトしか作れない、唯一無二の商品になったんです。零細企業は他で買えない商品を作ることは“マスト”ですよ
「魚屋のおっさんなのに、しゃらくさいこと言っているだろ?」と、石橋さんは照れ笑いしました。
やまちほさんに聞いた!「鰹肉with 鰹の恵み塩」をどう使う?
アウトドアショップSWENで、公式インスタグラムの“中の人”としてキャンプ情報を発信する広報・やまちほさんに、鰹肉について聞きました!
Q.鰹肉をどんなシーンに使いますか?
キャンプ飯のメイン料理にぴったりでしょう。
Q.アレンジメニューを教えてください!
絶対チャーハン、焼飯です! 意外とビーフシチューならぬ、シチュー系にも合いそうな予感です。
「恵み塩」が単品でめちゃくちゃおいしいので、ちょっと味が足りないという時に、違う料理に調味料としてかけてもいいと思います。やいづキャンプ飯の「焼津餃子」にも合うかもしれません。
「魚屋が発信してこなかった反省がある」
石橋さんは「浜おやじチャンネル」 というYouTubeチャンネルに、なまり節や酒盗の食べ方を紹介する動画を公開しています。
「きょうはカツオの塩辛のレシピを紹介します。カツオの塩辛は別名『酒盗』と呼ばれます。酒がよく進む、『酒が盗まれるようだ』ということから酒盗と言います。まずは簡単な酒盗の冷や奴のせから作ります」

なまり節をパスタにしたり、酒盗のお茶漬けを作ったり、実演しながら作り方を解説。
実は、こうした情報発信を始めたのは「魚屋が発信してこなかった」後悔と反省があるからだと言います。
カネオト石橋商店 4代目・石橋利文さん:
ショックだったのは東京の友達に「なまり節ってどうやって食べるの」と言われたことです。これまで魚屋がなまり節を発信してこなかった、後悔と反省があります
焼津は少し前までは「遠洋漁業の基地」として教科書にものっていたほどですが、今の若い人は知らないのではないか。焼津の街を全国に知らしめることで、自分たちも生き残ることができると信じています。

カネオト石橋商店・石橋さん:
やいづキャンプ飯は参加する14社みんなががんばって真剣に商品を作りました。僕は最年長だから、うるさがられるかもしれないけど、若い人のために意見も言いました。単体ではできなかったプロジェクトだと思います
同業者で情報交換ができたのも、これまでになかったチャンスだったと言います。一方で「やり方を盗まれても平気。真似なんかできない唯一無二の商品だから」と自信ものぞかせる石橋さん。
すでに新しい動画のアイデアもあって、撮影に向けて動いています。そこに61歳の、なまり節と焼津を愛するからこそ尽きないエネルギーを感じました。
もっと見たい!やいづキャンプ飯
FISH
インドマグロ「ほほ肉」「頭肉」「かま」などマグロ卸だからこそ入手できる希少部位を使用した、解凍して焼くだけで食べることができる漬け魚です。
【購入】FISH みりん・味噌・粕(マルイリフードサプライ直営店「焼津港丸入商店」)
価格:756円
製造:株式会社マルイリフードサプライ
焼津餃子
削る鰹
新感覚の「削って食べるかつお節」。通常のかつお節よりも水分量が多く、半生のような食感です。ビーフジャーキーに近く、うま味がギュッと詰まっていて、これだけで「おつまみ」になります。
【購入】削る鰹(新丸正直営店「堅魚屋」)
価格:1620円
製造:株式会社新丸正
ゴロっと塩さばカレー
さば専門店あまる齋藤商店が目利きした、脂が乗った肉厚の塩さば(軽く塩で味付けされたさば)の切り身がゴロゴロ入ったお魚と野菜のカレーです。
価格:680円
製造:株式会社あまる齋藤商店
sponsored by やいづキャンプ飯プロジェクト事務局