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浜松市西区にある水族館「浜名湖体験学習館 ウォット」で、浜名湖の湖底のデジタルマップが公開されています。生き物のすみかとなる海草「アマモ」の減少を食い止めるためのプロジェクトの一つで、デジタル空間で湖底環境を検証することで、アマモの再生に役立てます。
“1億点のデータ”からマップが完成

3月上旬、風がほとんどなく湖面もおだやかな測量日和。ウォットの西側で湖底のレーザー測量が行われました。
測量は専門家や漁業関係者、地域の企業などからなる浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトが、アマモの再生に向け実施しました。苗を植える場所の選定に湖底デジタルマップを役立てようという狙いです。
測量を行うのは建設コンサルタント業のウインディーネットワーク(下田市)です。

大型のドローンにグリーンレーザーの測量装置を付け、今回の調査範囲6万1500平方メートルの湖上に飛ばします。
装置から湖底に向け1秒間に10万回のペースでレーザーを照射し、3Dの位置データを取ることで、普段は見えない湖底の地形があらわになります。無数の点のデータを集めることから「点群データ」とも呼ばれます。

レーザーは通常は水面に反射してしまうため湖底まで届きませんが、グリーンレーザーは水面を通り抜け、湖底まで到達します。
ウインディネットワークはこれまでにも、下田市沖の海底にある沈没船や、遠州灘の消波ブロックの測量に成功してきました。

ドローンは事前に申請した飛行経路に従ってレーザーを照射しながら、高度50mをゆっくりと飛行。
19分間の飛行で1億点のデータの取得に成功しました。
この後はデータの中から水中の浮遊物など不要な情報を除去し、湖底マップの精度を上げていきます。
測量を担当した土屋武憂亜 主任は「やったことがない分野なので難しいが、アマモの再生に協力したい」と話していました。

アマモの植え直し作戦
アマモはかつて浜名湖のいたるところに繁茂していました。
アサリの稚貝や幼魚など、小さな生き物がたちが身を隠すことができるので「海のゆりかご」とも言われています。

しかし約10年前から浜名湖をはじめ全国各地の海でアマモが減少し、漁業にも影響が出ています。原因は温暖化や栄養分の変化など、さまざまな理由が説かれていますが、明確にはわかっていません。
調査が行われたウォットの西側も、かつてはアマモが茂っていましたが、いまは白い砂が肌を見せています。

そこで浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトは、陸上の大型水槽でアマモの苗を育てて浜名湖に植え戻す計画をたてています。
2024年から育てている苗は、試行錯誤しながらも成長しており、2025年秋にも湖に植え戻す予定です。

VR空間で湖底散歩を実現へ
3月28日、浜名湖体験学習施設ウォットで浜名湖デジタルマップの公開が始まりました。
一見ドローンから撮った映像に見えますが、よく見ると湖に水がありません。のりの養殖網が地面から生えているように見えました。
このマップに水流や潮位の変化のデータを加えれば、デジタル空間にアマモを植えて、育つかどうか検証することもできるそうです。

浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト有識者委員会のメンバーからも、活用へ期待の声があがりました。
有識者委員・山田祐己さん(漁業者):
アマモの植え付けの無駄打ちが少なくなります。浜名湖デジタルマップがあることで、植え付けのやり方や場所の選定方法が変わります
また会場では、県内の海のデータから作成した海底のVR空間も体験することができました。今後浜名湖デジタルマップもVR化して、一般の人たちに湖底散歩を楽しんでもらう予定です。

VR体験は3月28日のみですが、浜名湖デジタルマップは、2階アマモ水槽近くにあるモニターで公開しています。(予告なく終了することがあります。)ウォットの入館者は誰でも見ることができます。
浜名湖デジタルマップで、再生していくアマモの姿が3次元で想像できるかもしれません。

■施設名 浜名湖体験学習館 ウォット
■住所 浜松市中央区舞阪町弁天島5005-3
■営業時間 9:00~16:30
■定休 月(祝日の場合翌日)・年末年始
■問合せ 053-592-2880
浜名湖のデジタルマップは、浜名湖で近年問題となっているアマモの減少を食い止めるために、周辺で暮らす人たちが力を合わせてできることに挑戦しようと立ち上がった「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」の一環です。次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる日本財団「海と日本プロジェクト」の支援で行われました。


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