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新型コロナの国内初感染が確認されてから5年、分類が5類に変更されて間もなく2年。コロナ禍により奪われた日常はアフターコロナの世界で少し形を変えつつも着実に戻って来ているが、ウイルスも変異を続け存在している。
平穏な日常を奪ったコロナ禍

静岡市・田辺信宏 市長(当時):
私から市民の皆様にお知らせをいたします。このたび初めて、静岡市内で新型コロナウイルス感染症の患者が確認されました
2020年2月28日、静岡県内で初めて新型コロナウイルスの陽性者が確認された。
1月15日に初めて国内で確認されてから、約1カ月半後のことだ。
当初はクルーズ船の乗客や海外に出かけた人たちが中心だったが未知のウイルスに、どう対応してよいのか、どう伝えればよいのか、誰にも分からなった。
こうした中、政府が決めたのは子供たちの学校の休校だ。
安倍晋三 首相(当時):
学年を共に過ごした友達との思い出を作るこの時期に学校を休みとする措置を講じるのは断腸の思いです
人と人との接触を減らす、距離を取る、新しい生活様式が始まった。
しかし…。

新型コロナ対策・専門家会議
尾身茂 副座長(当時・2020年3月):
孤発例が、いつどこかで爆発的な患者急増、オーバーシュートにつながりかねない状況が続いている
感染拡大はとまらず「クラスター」「オーバーシュート」「パンデミック」「PCR検査」などの聞き慣れない言葉が日常となっていった。
そして2020年4月。
安倍晋三 首相(当時):
改正新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項の規定に基づき緊急事態宣言を発出いたします
企業はテレワークを推進し、イベントや酒を提供する飲食店の営業は休止に追い込まれた。
さらに「人流」を抑える取り組みが強化され、社会は大きな我慢を強いられた。
そうした中でも、新型コロナは変異を続けていった。

県疾病対策課・後藤幹生 課長(当時):
デルタ株、今までにない最強の感染力。もう別次元、今までと違うウイルスに生まれ変わってしまったと言っても過言ではない
どんな対策が有効なのか、より多くの命を守るため、何が必要なのか。
行政、医師、企業、社会が力を合わせた。
そして、世界中で進められた研究により、かつてないスピードでワクチンと治療薬が開発され社会に広がった。
ウィズコロナからアフターコロナへ

2023年5月。
新型コロナは感染症法上の分類が、インフルエンザと同じ5類に移行され日常を取り戻す動きが、本格化していった。
海外との行き来にも支障がなくなり、2025年1月の訪日外国人は1カ月間として過去最多となった。
静岡県下田市にある飲食店。
現在、週末の店内はほぼ満席状態で、料理やお酒を気の合う仲間と自由に楽しむ日常が戻っている。
新型コロナへの感染を経験したという男性は…。
男性来店客:
症状が結構重く、味覚障害になり1カ月くらい味を感じなかった。健康に気を付けようとそれをきっかけに禁煙できたが、好きな店も自粛していて行けなかった。今はこうなって良かったと思う、本当に

下田市内で4店舗の飲食店を経営する開国グループ・徳島一信 代表はこの5年間、従業員の生活を守るために奔走した。
開国グループ・徳島一信 代表:
あの頃はやっぱりお店を維持していくことが本当に大変で。お金がどんどん飛んで行ってしまって、どうしたらよいのか分からない。いま思い返すとそういう状況
新型コロナがまん延していた当時、通常営業はできず子供たちへの食事の提供やテイクアウトメニューの開発など下田の町を支える取り組みなどに力を注いできた。
お客さんの笑顔や笑い声の戻った店内に、この上ない喜びを感じている。
開国グループ・徳島一信 代表:
あの頃を思い返すと、もともと料理が好きでこの世界でやっているので、お客さんとコミュニケーションを取りながら仕事ができるのは本当にうれしい

新型コロナ対策に県の専門家会議の座長として先頭に立って取り組んでいた倉井華子 医師に当時の状況ついて聞いた。
県立静岡がんセンター・倉井華子 感染症内科部長:
感染症がこれだけ世界を変えてしまうということを実感できたのが大きい。医療に関して非常に多くの人たちが協力してくれ、真剣に向き合ってもらえるのだなと感じたことが印象的だった。当初は恐怖が呼ぶ偏見と言うのか、感染者が出た店が風評被害で営業停止になったり、患者が出た施設に多くの批判が集まったりということからトラウマを抱えた人を多く目にしてきたので情報の伝え方、怖さをどのように伝えるかの難しさを強く感じた
また、当時の苦労について尋ねると…。・
県立静岡がんセンター・倉井華子 感染症内科部長:
医療現場は恐怖を感じるよりただ頑張るだけと言う状況であったが、感染者に対する心無い言葉を聞くのがつらかった。大変なことと言えば、患者の受け入れを拒否する医療施設や宿泊施設など多くあり、わからない中でそうした所に協力してもらうのは大変だった
変異を続けるウイルスへの対応

初めて感染が確認されてから5年が経ったが新型コロナウイルスが無くなったわけではない。
現在の感染状況は定点観測された数値が1週間に1回発表されており最新の数値で1医療機関あたり6.84人となっている。
これは県が独自で定める注意報レベルの「8人」をやや下回り、警報レベル「16人」からはかなり下の落ち着いた状態だ。
ただ、時系列で見ると半年前と2024年の夏に比較的大きな流行があったと確認できる。

また、東京都の健康安全研究センターでは新型コロナが5類になった後も変異株の解析を続けており、2024年の夏「KP.3(ケーピースリー)」の流行をいち早く察知していた。
「KP.3」は、オミクロン株の子孫にあたり、従来のオミクロン系統よりも感染力が強いのが特徴だ。
そして「KP.3」が、さらに変異して今は「XEC(エックスイーシー)」中心になっていると言う。
この株は感染力が強い以外、症状は「KP.3」とほとんど変わらないそうだ。

次々と変異していくウイルスに対して私たちはどんなことに注意すれば良いのだろうか。
県立静岡がんセンター・倉井華子 感染症内科部長:
注意する点として「感染力」「重症化しやすいか」「免疫逃避能力(ワクチンが付きにくいか)」の3点で評価する必要がある。変異株といっても”どこが変わっているのか”注目することが重要
また、変異したウイルスにワクチンは効くのか聞いてみた。
県立静岡がんセンター・倉井華子 感染症内科部長:
今のワクチンはベースラインとなる株を使っていて(変異株にも)一定の効果は得られるようになっているので安心して欲しい
新型コロナは5類に分類されたが、我々の生活を一変させたウイルスは変異し続け、我々の周りに存在していることを忘れずにいたい。