
防衛省は2025年に入り、懲戒処分を受けた自衛隊員の性別を公表しない運用を始めた。中谷元 防衛相は「性的指向や性自認に関する配慮といった動きが社会的に広まっていることも含め総合的に考慮した結果」と説明している。

静岡県御殿場市にある滝ヶ原駐屯地。
カラオケ店で誤って別の部屋に入ったことで客から苦情を言われ、口論の末、一方的に暴行を加えて全治2週間のケガをさせた陸士長(26)の停職処分を2月13日に、パチンコ店で別の客が置き忘れたスマートフォンを盗んだ陸士長(21)の免職処分を2月28日に公表したが、どちらの事案も性別は明らかにされなかった。
この点について、滝ヶ原駐屯地はいずれも「LGBTQに対する偏見や差別につながる可能性がある」と説明している。
1月24日に行われた中谷元 防衛相の記者会見によれば「防衛省・自衛隊における懲戒処分や刑事処分の公表は説明責任や被処分者を含む関係者のプライバシーの観点を踏まえて必要な情報を公表することにしている」という。
ただ、もともと基準の上では性別について公表することになっていなかったものの、担当者によっては問い合わせがあった場合に答えるなど、省として統一した対応になっていなかったそうだ。
このため、2025年に入り処分対象者の性別を明らかにしない運用を始め、防衛省として一貫した対応にするよう関係各所に周知した。
中谷防衛相は「性別については事案によって被処分者を含む関係者の個人が特定され得る場合があるほか、性的指向や性自認に関する配慮といった動きが社会的に広まっているということも含め総合的に考慮した結果」と述べている。
一方で警察や地方自治体など、いわゆる公的機関が懲戒処分を発表する場合、処分対象者の性別を公表しないケースは特段の事情がない限りほぼ皆無と言っても過言ではない。
説明責任という観点から質問を受けた中谷防衛相は「関係者のプライバシーを踏まえて必要な情報を公表するという責任を果たしていくことは当然」との見解を示した上で、「現状こういった決定をしたことについて、今後とも必要に応じて公表内容については不断に検討して適切に対応していきたい」と答えている。