ニュース

「今までにないものが生まれる可能性」 どんな効果が?リニア開業で静岡への「ひかり」停車増 経済の専門家に聞く

新幹線と丹羽社長と難波市長

リニア新幹線の計画をめぐり、JR東海の丹羽社長は静岡県へのメリットとして品川・名古屋間が開業した際には県内の「ひかり」の停車回数を増やす考えを明らかにしました。「ひかり」の停車が増えると県内経済にはどんな効果がもたらされるでしょうか。新幹線の利用客の反応と経済の専門家に展望を聞きました。

丹羽俊介 社長

1月30日、鈴木知事の元に訪れたJR東海の丹羽俊介社長。

突如として関係者も驚く提案をしました。

JR東海・丹羽俊介 社長:
静岡と浜松に停車するひかりを、現在は基本パターンで1時間に1本のところ、名古屋開業時点では1時間に2本に

リニア中央新幹線が名古屋まで開業した際に静岡駅と浜松駅の新幹線の「ひかり」の停車回数を2倍にすると明言したのです。

利用客(静岡駅)

JR静岡駅で新幹線の利用客に話を聞いてみると…

利用客:
(新幹線を待つ)時間にいろいろできることがあるのになと思っていたので、やっぱり増えるとうれしい

利用客:
タイミングが計りやすいので動きがとりやすい。すごく助かる、(1時間に)1本だと「こだま」に乗るしかなかった

利用客:
「こだま」に乗る時もあるので、スタートしてみないとわからないが便利にはなると思う

難波喬司 市長

静岡・浜松両市の市長からも…。

静岡市・難波喬司 市長:
観光客だけでなくビジネスの人もやっぱり気楽に来られる。スピードもいま最短で品川から47分くらいで東京圏と一体くらいの距離になっている。こちらでどんどんビジネスをやっていける

浜松市・中野祐介 市長:
地域の経済・産業の活性化にもつながると思うし、インバウンドをはじめとする観光の振興という点でも非常に大きな効果が出てくると思う

JR東海の提案に歓迎の声が上がります。

リニアの工事に伴う懸念が浮上して以降、JR東海からの“踏み込んだ”提案は初めてです。

川勝平太 前知事(2017年)

静岡県・川勝平太 知事(当時):
デメリット、デメリットしかないんですね。リニアそれ自体については

2017年、川勝前知事は、リニアの工事で環境への影響はあるものの静岡にはメリットがないと強い反発を始めました。

これに対し、JR東海はリニアが開業すれば「ひかり」「こだま」を増やせると主張を続けてきたものの、どれだけ増えるかなどの具体的な言及は避けてきました。

こうした中、2023年10月には県とJRの間を取り持つ国交省が自ら、静岡県内の新幹線の停車本数を1.5倍に増やせる可能性があるとの試算を公表。

10年間で1679億円の経済波及効果があると分析しました。

停車中の新幹線(静岡駅)

国交省の試算から1年あまりが経ち、今回初めて具体的な提案をしたJR東海。

では、専門家はその効果をどう見るのでしょうか?

静岡経済研究所・望月毅 主席研究員:
今まで静岡から東京は「こだま」で1時間半だったが「ひかり」で1時間になると30分の余裕が生まれる。時給換算にすると数十%生産性が上がる。そういったメリットはかなり大きい

時間短縮による効率化に加え若者の流出抑制にもつながる可能性があると話します。

静岡経済研究所・望月毅 主席研究員:
「ひかり」の停車増加によって通学できる範囲がかなり広がる。長期的には静岡に住む人が減らない、あるいは増える。東京に進学しても東京から静岡に帰ってきやすくなる。1つ新しい線路ができるのと一緒で、人の動きが活発になって新しい人の流れが出来る。今までにないものが生まれる可能性がある

JR東海が示したリニア開業による静岡のメリット。

今後の議論の進展がますます注目されそうです。

28項目の進捗状況

「ひかり」の停車回数の増加で県内経済や雇用創出にも高い効果があるとみられますが、その前にJRと県がやるべきことが着工に向けた課題解決の議論です。

トンネル工事による水資源や生態系への影響など県がJRと対話するべきものとして28項目を挙げていますが、すでに解決したのはわずか4項目のみです。

残る24項目について議論を進めなければなりません。

鈴木知事のコメント

取材の中で「メリットが示されたことで議論がおざなりになってしまうのでは」と心配する県民の声も聞かれましたが、先日の丹羽社長との対談を終えた鈴木知事は「残りの対話項目は丁寧に進めていく。この方針に変わりはない」と話し「県としての着工の判断に影響することはない」と主張しています。

静岡のニュースを発信!静岡で何が起きているのか。これからどうなるのか?丁寧に詳しくお伝えします
  • BLOG
  • Instagram
  • LINE
  • YouTube