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人気店のパンも半額に!売れ残りの食品を安く提供…アプリで店と客をつなぎ食品ロスを削減へ 静岡

フードシェアリングサービス参加店の画面

食べ残しや売れ残りで廃棄される、いわゆる食品ロスを減らそうと、静岡県三島市は2024年10月から店と消費者をつなぐアプリを試験的に導入した。閉店が近くなると人気のパンが定価の半額になる店もある。導入から1カ月あまりだが、すでに効果が見え始めているという。

売れ残り食品をお得に買い物

タベスケに参加するパン店

閉店1時間前のパン店。

お客さんがスマホを手に買い求めているのは売れ残りそうだった商品だ。

これは三島市で導入されている「フードシェアリング」と呼ばれる取り組みだ。

三島市清掃センター

本来食べられるのに捨てられてしまう食べ物、いわゆる食品ロスの量は、三島市の推計では市内で年間 約4400トン。このうち、家庭からが約2700トン、小売り店など事業者からが1700トンとなっている。

三島市はゴミを埋め立てる最終処分場がほぼ満杯の状態で、食品などの生ゴミを減らすため「フードシェアリング」に力を入れている。

アプリで店と客をつなぐ

タベスケ参加店の画面

今回、売れ残りを減らしたい店とお得に買い物をしたい消費者をつなぐマッチングサービス「タベスケ」を2024年10月1日から導入した。

「タベスケ」の導入は静岡県内の自治体では三島市が初めてだ。

費用は導入した自治体が負担し、三島市の場合は年間26万円ほどかかるが、試験的な運用ということで1年間は無料となっている。

アプリに登録した店は売れ残りそうな商品や賞味期限が近い商品などを格安で出品し、消費者は欲しい商品をアプリで予約して、店舗で受け取るというサービスだ。

「消費期限」と「賞味期限」の違い

食品などに表示されている期限には「消費期限」と「賞味期限」がある。

「消費期限」は安全に食べられる期限で、期限を過ぎたら食べない方がいい。

それに対して「賞味期限」は品質が変わらずおいしく食べられる期限で、期限が過ぎても食べることはできる。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん

今回の「タベスケ」では賞味期限の近い商品などを対象にしていて、2024年11月時点で三島市内の協力店は31店舗、登録者は約2000人となっている。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん:
まずは今回のサービスを使って楽しんで、お買い得にまずは買ってもらい、結果的に食品ロスが減ったということで、それを私たちは喜んでいる

「もっと店が増えるとありがたい」

タベスケ参加店のパン

こちらの店は低糖質でヘルシーなパンが人気だ。

当日に焼いたものしか販売しない上、閉店時間までショーケースに多くのパンが並んでいることを求められるため、店は売れ残りに頭を悩ませていた。

KoKaRa Bakery・山田圭一朗さん:
自分たちで朝から作ったものを最後の最後にゴミ袋に入れてしまうということが一番心苦しかった。それがお客様に届いて食べてもらえるということでうれしい

タベスケの利用客

ラスクなど他の商品に加工できないパンを詰め合わせにして半額ほどで出品。

アプリの利用客からは「これが半額なんて。もっとお店が増えるとありがたい」「SDGsで物を大切にしなければ自分たちが本当に苦しむことになってしまうと思う」など反応は上々だ。

タベスケ参加のパン店

売れ残るパンの量は半分以下になった上に思わぬ効果もあった。

店によると「タベスケ」をきっかけに利用してくれる客もあり、夕方の来店客がこれまでに比べ増えたという。

「お試しでもいいので食べて」

「伊豆河童」が出品した商品

甘味処「伊豆河童」はトコロテンを中心とした優しい味わいの商品が人気の店だ。

この店では品質を確保するため、賞味期限が残り3分の1となった商品は店頭に置かないルールとなっている。

トコロテンの売れ行きは当日の天気や気温に左右されるため、捨てざるをえないことも多かったという。

伊豆河童・高橋康子さん:

伊豆河童・高橋康子さん:
賞味期限が短くなっても、それでもほしいといってもらえる人など、多くの人に知ってもらって、お試しでもいいので商品を食べてもらいたい

この日は賞味期限が近いもののほか、箱の角がつぶれてしまった商品などを出品したがすぐに売り切れた。

「1円」で販売するワケ

賞味期限切れ商品を1円で販売

こちらのスーパーではこれまでも野菜を少量ずつ仕入れることで在庫を少なくし、売れ残りは総菜として加工するなど食品ロスの削減に努めてきた。

アプリで主に出品しているのは、品質的には問題ないものの消費者が手に取ってくれない商品だ。

賞味期限が前日に切れてしまった商品や配送中や陳列中のミスで少し傷がついたりへこんでしまったりした商品を「1円」で販売している。

エッグマート松本店・加藤亮 取締役

1円とはいえ値段をつけることで、「買う側・売る側の食品に対する責任を感じてほしい」と考えている。

エッグマート松本店・加藤亮 取締役:
(食品が消費者に)捨てられているという自覚を持ってほしい。(店など食品を)取り扱う側ができるだけロスを減らすとためにも、(消費者を含め)全員が行動していくことが大事

食品ロス削減へ消費者ができること

タベスケ参加店の画面

2024年11月でアプリの導入から1カ月あまり。

食品ロスを削減できた量は、すべての店舗を合わせると400kgに達した。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん:
(商品を)手前から取るのは「手前取り」といわれているが、非常に重要で、それも食品ロス削減に貢献している。まずは自分や家族で消費できるかということを考えつつ、期限を見て買うか買わないかを判断するということもすごく大事。「買ったら食べきる」ということでお願いしたい

食品ロス削減を目指す三島市の取り組み。

すでに効果が見え始めているが、私たちも買い物や調理など普段の生活から見直していくことが求められている。

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