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毎年、紅葉シーズンに観光客で賑わう静岡県川根本町が危機感を募らせている。絶景が楽しめる遊歩道が2024年9月に落石で通行止めになり、町は応急的な工事をして通行できるようにしたが観光客は思ったように戻っていないからだ。
紅葉シーズンなのに観光客まばら
風光明媚な静岡県川根本町。
その雄大かつ壮観な眺めを求めて、コロナ禍以前は年間10万人以上が訪れていた人気の観光地だ。
特に紅葉シーズンには美しい景色を楽しむことができる「夢のつり橋」が人気となっている。
川根本町まちづくり観光協会のHPでは「温泉街から夢のつり橋をめぐる遊歩道が整備されており約90分で周遊できます。エメラルドグリーンの川面から高さ8m、長さ90mにわたってかけられている夢のつり橋では、揺れる橋の上から色鮮やかに染まった木々と湖のコントラストが見事な絶景が楽しめます」と紹介されている。
人気スポットだけに、例年この時期は渡るのに2時間から3時間待ちになるが、11月4日に訪ねると観光客はまばらだった。
地元の観光関係者は「これほど人が少ないのは13年前の東日本大震災の時以来だ」と嘆く。
観光事業者:
これは相当の危機。(夢のつり橋への遊歩道が)復旧しているにも関わらず、このお客さんの動きだと意外に少ない
観光事業者:
お客さんが本当に減ってしまったので、また同じことが何か月も続くなら、経営が成り立たない
今も残る落石に恐怖を感じる人も
要因の1つが2024年9月に起きた落石だ。
寸又峡の温泉街から夢のつり橋へと続く道路を土砂が覆いつくした。
川根本町まちづくり観光協会
戸塚崇 事務局長:
自然が相手。そうなってきた時に我々が考え得る最善の方法を常に取り続けているが、想定を超えることがあるので、その都度新しい想定に対して基準をいろいろと設けていくしかない
応急的な復旧工事は1カ月ほどで終わり、紅葉シーズンを前にした10月18日には夢のつり橋までの遊歩道の通行が可能になった。
ところが、肝心の客足は思うように戻っていない。
遊歩道を歩いた観光客は「怖かった。落ちた石がまだそのままだったので、『気をつけようね』と言いながら歩いた」「落石があった時にどうやって彼女を守るか考えていた」と、落石現場近くを通った感想を話す。
情報発信力が不足?
また、寸又峡の地で60年の間、温泉宿を営んできた望月孝之さんは発信力不足を指摘する。
翠紅苑・望月孝之 会長:
「落石があって危険」という感覚があると思う。全国紙で「夢のつり橋は落石で通れない。これから先、気をつけて情報(収集)を」という記事が結構出たので、つり橋に行けることをまだ知らないお客さんも大勢いる
SUP事故や鉄道一部不通も影響か
さらに、2022年9月の台風被害以来、大井川鉄道の一部区間で運休が続いていること、2024年10月には周辺の接岨湖でボードの上に立ってパドルを漕いで進むSUPをしていた50代の夫婦が溺れて死亡し、湖の利用に制限がかけられていることも川根本町の観光に暗い影を落としている。
翠紅苑・望月会長は「我々が生まれ育った土地。この土地が段々さびれてくると非常に寂しくなる。一生懸命、土地が長持ちするように、存続するように頑張っていきたい」と話す。
とはいえ自然災害は抗うことができず、どれだけ万全な体制を整えても突発的な事故をゼロにすることは極めて難しい。
手をこまねいているだけでは同じことが繰り返されてしまう。
「川根本町の良さを伝えたい」
このため、災害に強いまちづくりを進めていくことはもちろんだが、同時に町や観光協会には新たな観光誘客の策を打ち出していくことも求められている。
観光協会の戸塚事務局長は「まだまだ川根本町の良さをと伝えることができていない。『もっとこんなのがある』『こんなおもしいものがある』というのを、発信ができていない可能性はあるので、しっかりその点を伝えていきながらお客様に体験してもらうことが大事だと思っている」と前を向く。
観光協会はHPで紅葉の色づき状況を掲載していて、夢のつり橋のある寸又峡は2024年11月12日時点で「5分」の色づきとなっている。