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迷走した台風10号の大雨による土砂崩れで、静岡市の寺の墓石約50基が倒壊した。
被害から1カ月が経つものの、墓を元通りにするための努力が続く。
新たな土砂崩れへの懸念から住職は無事だった墓からも骨壺の“救出”作戦を続け、地元にある高校生も支援に向け募金活動に乗り出した。
迷走台風 県内各地に爪跡
光田有志アナウンサー(8月27日):
静岡市駿河区のテレビ静岡本社前です。先ほどから強い雨が降り始めました。雨粒も大きい印象です。道路を見てみると、車が大きな水しぶきをあげながら走っています
斉藤力公 記者(8月29日):
静岡市葵区の秋山川です。川の水位かなり上昇していて、濁った水が速いスピードで流れています
鈴木櫻子 記者(8月31日):
静岡市清水区です。今も強く雨が降っています。こちらの道路冠水してしまっていて、脇を流れる用水路との境目が分からなくなってしまっています。また、奥に目を向けますと車が1台、ナンバーのあたりまで水に浸かり動けなくなってしまっています
記録的な大雨によって県内各地に被害をもたらした台風10号。
静岡県によると静岡市や焼津市を中心に500を超える住宅で浸水被害が確認されました。
熱海市では山が崩れたことで大量の土砂や水が施設内に…
川船昌雄 記者(8月31日):
熱海市の火葬場です。駐車場が大量の土砂で埋められています
静岡市駿河区ではイチゴ農家のハウスが土砂に呑み込まれました。
杉本真弓カメラマン(9月1日):
静岡市久能地区の土砂崩れ現場です。現在、水は流れていませんが周辺の農業用ハウスが土砂に埋もれてしまっているのが確認できます
土砂崩れで墓石約50基が倒壊
福島流星 記者(9月1日):
土砂崩れが発生した静岡市清水区のお寺に来ています。あちら奥、山肌が完全に見え、
その先に崩れた墓石が積み重なっています
また、約1300年の歴史を持つ清水区の鉄舟寺でも土砂崩れにより50基近い墓石が倒壊。
鉄舟寺・世永天山 住職:
いや本当に、青天の霹靂で言葉の1つも出ない。そんなところですね。まさか自分のところにもこういうやってくるのかと、本当に何も言葉も出ませんでした。私もお寺を守る身として、現実を受け止めながら、しかしながらですね、ここで止まるわけにはいきませんので、一歩ずつ前に進んでいくしかないなと、今はそう思っています
倒壊を免れた墓石からも骨壺 “救出”
被害から約2週間後の9月13日。
倒壊を免れた墓石も今後土砂の崩落に巻き込まれる危険性があることから、鉄舟寺では骨壺を取り出す作業が行われていました。
世永天山 住職:
あの川口さん、3人だと思ったら5人の仏さんがありましたので、今5人の仏さんを救出しましたので、こちら今からお寺のほうに安置しますので
川口和恵さん:
もしかしたら崩れちゃうかもしれないって ちょっと心配だったので、「骨壺を早めに出せるなら出してほしい」とお願いしていて、早めに取り出していただけたので安心しました
遺骨が無事で「涙が出るほどうれしい」
二次災害のおそれもあり、現在は檀家が墓参りできない状態にあるため、9月22日には彼岸の合同法要が行われました。
世永住職によると、今回の被災を機に“墓じまい”する檀家もいるということですが、この地で墓石の再建を望む人も多いそうです。
鉄舟寺のすぐそばに住む滝口智子さんもそのひとりです。
滝口智子さん:
最初はすごくショックでその日は眠れなかったんですが、災害ということでもう考えても仕方がないと思って。それでいたところ和尚さんに(遺骨が)無事だということを電話いただいて、本当に涙が出るほどうれしかったです
高校生が募金 昔は寺が学生寮
こうした中、鉄舟寺を支援しようと動き出したのが同じ清水区にある東海大静岡翔洋高校です。
「鉄舟寺に向けた義援金活動をおこなっております。募金してくださる方いらっしゃいましたら、募金のほうお願いします」
現在の東海大学の前身にあたる航空科学専門学校が清水区三保にあり、当時は鉄舟寺が学生寮として使われていたという縁があったからです。
東海大静岡翔洋高・若神子凛 生徒会長:
お骨ということもあり重機が入れないということを聞いたので、私たちの力によって少しでも早くお墓が元の形に戻ればいいなと考えております
鉄舟寺・世永天山 住職:
檀家さんのことを考えると1日でも早くそれは何とかしたい。「できれば年内に」と言いたいけど檀家と約束できることではないので、ただただ1日でも早く元に戻したい、復旧したいという気持ち
檀家や地域の高校生から力を得た鉄舟寺。
今は前だけを見つめています。