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涙のラストラン 静鉄電車1000形が引退 51年前は地方鉄道初のオールステンレス製車両で話題に  

静鉄電車1000形と引退を惜しむファン

51年間、静岡市を走り続けた静岡鉄道の1000形電車が2024年6月30日、その役目を終えて引退した。導入当時は地方鉄道では初めてのオールステンレス製の車両として、その近代的なデザインが話題に。引退セレモニーには大勢がつめかけ、中には涙ぐむファンもいた。

近代的デザイン 地方で初導入

引退する 静鉄電車1000形

四角い顔に丸い目、そしてステンレス製のシルバーのボディ。静岡鉄道の電車1000形の最後の車両、1008号だ。

静岡鉄道、通称・しずてつ電車は静岡市の新静岡駅と新清水駅の間 11kmを約25分で結ぶ。

この1008号は1976年の誕生以来、通勤・通学・レジャー・買い物客の足として48年間走り続けてきたが、その役目を終え引退の時を迎えた。

1973年の導入セレモニー

1000形の車両が導入されたのは51年前の1973年。

地方の鉄道として初めてオールステンレス製の車両が導入され、近代的なデザインが話題となった。当時は1日に約5万5000人が利用していたという。

後継のA3000形を2016年から導入

しかし、時代とともに車両も進化し、より安全性に優れ 省エネルギーやユニバーサルデザインを取り入れた新型のA3000形が2016年から順次導入された。

今回引退を迎えた1008号が1000形の車両として最後だ。

「もうちょい生き残ってほしかった」

ラストランの新静岡駅(6月30日)

1000形ラストランとなる6月30日、出発直前の新静岡駅のホームは、引退を惜しむ多くのファンでごった返した。

利用客:
今から30年以上前、小学校の時から乗っていた電車なんです。きょうで引退なので、寂しいです

別れを惜しむ少年

ファンの少年:
時代の流れなので(引退はしかたないが)、もうちょい生き残ってほしかったけど

静岡鉄道・川井敏行 社長:
50年間に渡ってこの街の足を支えてきてくれた1000形の引退式ということで、きょうこの日が来るのが怖かったような残念な気持ちで迎えていますが、こんなに大勢の方に見送っていただいて幸せに感じています

最後の乗車チケットは1時間で完売

ラストランに駆け付けたファン

1000形のラストランの乗車チケットの販売は先着200人限定。

発売からわずか1時間あまりで売り切れてしまったため、乗車できない多くのファンが最後の姿をカメラに収めようと駆け付けた。

武田さんは静岡鉄道に転職

静岡市に住む武田裕太さん(26)と森本彩香さん(仮名・26)。しずてつ電車1000形をこよなく愛す、いわゆる「撮り鉄」の仲間だ。

小学生の頃から電車が好きだった武田さんは、1000形へのあこがれを捨てきれず2023年に静岡鉄道に転職。

引退セレモニーの会場に映し出された1000形の映像は武田さんが撮影・編集したものだ。

森本彩香さん

一方、高校の教員を務める森本さんは、高校時代に「ちびまる子ちゃん」のラッピング電車のとりこになって以来、1000形を撮り続けてきた。武田さんはじめ、幅広い年代の「撮り鉄」仲間との交流も楽しみの1つだ。

森本さんは「それぞれ車両ごとに音が違ったり、付いている部品が違ったり、そういった点を写真に撮って見比べてみて『ここ違ったよね』と友人と話すことも楽しい」と話す。

よい撮影場所が見つからず移動

1000形の最後の出発を撮影しようとホームにきたが、ファンで混雑しなかなか前で撮影できない。

あまりにも多いファンに2人は引退セレモニーの撮影をあきらめ、線路沿いで最後の運行の姿を撮影することにした。

ラストラン それぞれの思い

川井社長の合図でラストラン出発

午後2時 いよいよ1008号のラストランだ。

静岡鉄道の川井敏行 社長たちの「出発進行!」の合図とともに走り出すと、ファンからは「ありがとう!」の声があがった。

ラストランの出発をホームで見送ったファンの中には涙を流す人もいた。

武田さんたちは沿線でお別れ

出発駅のホームでよい撮影場所を確保できなかった武田さんと森本さんは、1駅先の日吉町駅でカメラを向けながらラストランを見送った。

武田裕太さん:
ようやく実感が湧いたというか、本当に最後なんだなというのを実感して寂しい気持ちが強いですね

森本彩香さん:
3000形になっても地元の鉄道会社ですし、生活にも密接に関わってきてしずてつ電車でできたきっかけもあるので、ずっと追いかけていきたい

ラストラン後の車庫にも大勢のファンが

1000形最後の車両は乗客200人を乗せて7分間のラストランの後、車庫に入り、約50年の役目を終えた。

仲間の中には他の鉄道会社で第2の人生を歩んでいる車両もある。

この日引退を迎えた最後の1000形もしばらくはこの車庫で次の人生を待つということだが、再び どこかで多くの人に親しまれることが期待されている。

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